と言った。姿の無い、淡い猫の面影に向かって。姿は無くても、届くように。なぜだかここに来ればまた、会える気がしていた。


   ***

 目を覚ますと、優衣はここ一か月弱で過ごしなれた病室のベッドにいた。陽は大分傾いて、病室はオレンジ色に染まっている。

 ――そっか、昼寝しちゃったんだっけ。

 意識を手放す、猫になる直前の記憶を私は辿った。

 ガラケーを開き、メール機能を開く。

 先生の夢を見ました。

 そんな文面を打って、慌てて消した。連絡先を交換してから、連絡がしてみたくてたまらなかった。きっかけを探していた。

 ――いやいや! でもこの文面は危ない!

 やばい奴だ。

 そもそも、本当に夢だったのだろうか。随分とリアルで、時間まで現実とリンクしていた。

 ――でも、猫になるなんて……。

 それもまた信じられない話だ。

 ヴヴヴヴヴヴ……!

 その時、マナーモードの携帯が私の手の中で震えた。

「あわわわわっ!」

私は驚いて、携帯を落としそうになりながら慌てて画面を見る。新着メールを知らせる画面。

「わぁっ」

思わずため息のような呟きが漏れた。メールを開くとまず、携帯の画面いっぱいに桜が広がっていたのだ。メール内に、大きな桜の木を、見上げる形のアングルで撮った写真が添付されていた。