目を覚まして周りを確認すると、隣には先生が居た。先生もまた縁側で日向ぼっこして、昼寝してしまっている。

 柱に頭を預けて、気持ちよさそうに座ったまま眠っている。寝かせておいてあげたいが、このままでは風邪をひいてしまう。私は先生の服の裾を引っ張って、先生を起こした。

「ん? あぁ、寝ちまってたんだなぁオレ。お前と会ったことまで夢じゃなくてよかったよ」

先生がそう言って笑いかけてくれた。

「にゃー」
私も返事をする。

「んー、寝てばっかりもなあ。隠居生活は暇だし、散歩でも行くか」

先生が庭先に出て、私を振り返る。

「お前も来るだろ?」
――はい!

 返事の代わりに、私はにゃーと鳴いた。


 先生は小柄で、足が短いから、歩幅も小さい。私は先生ののんびり歩きにペースを合わせながら四足歩行していた。途中で猫としての自分の脚力に気付き、ジャンプを繰り返して、塀の上を歩いたりもした。

「おい、こっちに行こう」

そう言って、先生は何かを見つけたのか少し歩くペースを早めた。私もついて行く。

「ナー」

私は思わず、そう鳴き声を上げた。

 そこは並木道だった。満開の桜が道の両端に続いている。昨日の雨で散っていないのにも驚いたが、何より絶景だった。

「ここらの桜は咲くのが遅かったからなぁ。満開の前の雨っつーのは、桜を咲かせる雨らしいぞ」