何かおかしい。何が、とはまだはっきり言えない。得体のしれない違和感だけが、しっかりと感じられる。

鏡を探すが、夢とはいえそう都合よくは無い。

 とりあえず、地面のコンクリートからここが屋外で道路だとわかる。周りは見たことのない景色だが、自然豊かで緑が多い。

日本家屋の一軒家と、マンション、スーパー、コンビニ、コインパーキング。


 とりあえず、一軒家の庭先にお邪魔する。ここで鏡じゃなく水たまりを探す私はきっと賢い。

 けれど――ない。

 水たまりなんて無かった。考えてみれば、昨日も今日も晴天で、水たまりは蒸発してしまっているはずだった。無駄に現実とリンクしている夢だ。

 ここまできて、足の痛みがひどいので一旦休むことにする。


「猫か?」

そこに、聞きなれた声。見上げると、良く知った顔だった。

 ――鳴上先生!?

「にゃー!?」

私の出した声に驚く。日本語じゃない。でも、私が喋ろうとすると、猫が鳴く。その声は随分近くから。近すぎるくらい近く――自分の喉から聞こえた。

「どうした?」

鳴上先生は恐る恐る私に手を伸ばし、やっと届いたという感じで私の頭を撫でた。

「おぉ! 俺、犬にも猫にも懐かれないのに! 触らせてくれたの、お前だけだぞ!」

――いやいや、私先生のこと知ってるし。触らせないも何にも。嫌じゃないし……。あと、足が痛くて動けない。