【タイトル】
第6話 初めてのスキル習得
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2021-05-12 08:19:42(+09:00)
【公開日時】
2021-05-12 10:49:26(+09:00)
【更新日時】
2021-05-12 10:49:26(+09:00)
【文字数】
1,458文字
【本文(67行)】
ソルは身を潜めつつ、今後の戦略を考えていた。
特に今目の前にある資産だ。有限にして明確な資産。それが【SP】である。
ソルは【SP】の使用を試みる。
『SPを使用しますか?』『YES/NO』
SP項目をタッチすると目の前に画面が現れる。
ソルは『YES』を選択する。
すると目の前にはスキル一覧が表示された。スキル一覧には魔法や技、特性や耐性などの様々なスキルが存在しており、その習得にはそれぞれに応じた『SP』を必要とした。
神から授けられる固有(ユニーク)スキルの他にも、『SP』を稼ぎ、支払う事で手に入れられる通常のスキルというものが存在していた。
基本的に使用SPが多い程、強力、あるいは珍しく重宝するものだと考えていい。
ソルは色々と考えつつその一覧を見た。ソルのSPは今30だ。故にそれ以上のSPを必要とするスキルは最初から選択肢には入っていない。
この初手となる行動は今後の運命を占う程ソルにとっては重要なものであった。選択を間違えれば死んでしまいかねない。それほどまでに今のソルは脆弱なのだ。あの兎一匹を侮れない程に脆弱。
群れに挑む事が自殺行為な程に今の自分は弱い。それをまず認めなければならない。
その現実を見据えた上でソルは習得するスキルを選択する。
考える時間はあるが、それでも無限というわけにはいかない。放っておけば腹も減る。また狩りをしなければならない。
あまりに空腹になりヘロヘロになってからでは今度こそイルミラージュの餌食になりかねない。
考えた末のソルの選択は『強化』というスキルだった。
このスキルは生産職である鍛冶師なんかが習得するスキルだ。通常スキルの習得は自分の専門職に近しいスキルを主として選択する。
ソルは剣士である。だから普通は剣士系のスキルを習得するものではあるが。例えば物理攻撃力が上がるような。
しかし、ソルの選択したスキルは『強化』であった。この『強化』というスキルは手に持った物質を強化できる。
通常は鍛冶師が剣をより頑丈にしたり、切れ味や破壊力を増させるために使用するスキルだ。
だが、今のソルには武器らしい武器がない。それも当然だった。ソルはこの裏ダンジョン『ゲヘナ』に廃棄されたのだ。父であるカイは既にソルが死んでいると思っている事であろう。裸同然の状態で捨てられたのだから武器などあるはずもない。
だからまずは武器が必要だった。この『強化』のスキルでソルは武器を作り出そうとしたのである。『強化』のスキルに必要なSPは30pだった。手の届く範囲ではこのスキルを習得するのが現実的な戦略だったのである。
ソルはイルミラージュがいない事を確認し、身を乗り出した。目の前には一本の木の棒が落ちていた。
それなりにしっかりとした木の棒だった。木剣の代わり程度にはなりそうだった。
ソルは『強化』のスキルを発動する。
「強化」
ソルは念じる。スキルで木の棒を強化する。目に見えて木の棒が硬くなったように感じた。木刀よりも硬いくらい。その硬質さはまるで金属のようだ。
試しにソルは目の前にある大岩を叩いてみた。イルミラージュに気づかれるのを恐れ、わざわざ叫び声など出さないが。
ガン! ……良い音がした。斬れこそ当然しない。手がジリジリと痺れた。
だが、強化した木剣は本来なら折れるであろうところ、ビクともしていなかった。無事強化は成功しているようである。
いける……はずだ、多分。
ソルは確信こそ持てないが、最初の時よりは自信を持つ事ができた。
こうして木剣(強化済み)という武器を手に入れたソルは二度目の狩りへ出る事となる。
第6話 初めてのスキル習得
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2021-05-12 08:19:42(+09:00)
【公開日時】
2021-05-12 10:49:26(+09:00)
【更新日時】
2021-05-12 10:49:26(+09:00)
【文字数】
1,458文字
【本文(67行)】
ソルは身を潜めつつ、今後の戦略を考えていた。
特に今目の前にある資産だ。有限にして明確な資産。それが【SP】である。
ソルは【SP】の使用を試みる。
『SPを使用しますか?』『YES/NO』
SP項目をタッチすると目の前に画面が現れる。
ソルは『YES』を選択する。
すると目の前にはスキル一覧が表示された。スキル一覧には魔法や技、特性や耐性などの様々なスキルが存在しており、その習得にはそれぞれに応じた『SP』を必要とした。
神から授けられる固有(ユニーク)スキルの他にも、『SP』を稼ぎ、支払う事で手に入れられる通常のスキルというものが存在していた。
基本的に使用SPが多い程、強力、あるいは珍しく重宝するものだと考えていい。
ソルは色々と考えつつその一覧を見た。ソルのSPは今30だ。故にそれ以上のSPを必要とするスキルは最初から選択肢には入っていない。
この初手となる行動は今後の運命を占う程ソルにとっては重要なものであった。選択を間違えれば死んでしまいかねない。それほどまでに今のソルは脆弱なのだ。あの兎一匹を侮れない程に脆弱。
群れに挑む事が自殺行為な程に今の自分は弱い。それをまず認めなければならない。
その現実を見据えた上でソルは習得するスキルを選択する。
考える時間はあるが、それでも無限というわけにはいかない。放っておけば腹も減る。また狩りをしなければならない。
あまりに空腹になりヘロヘロになってからでは今度こそイルミラージュの餌食になりかねない。
考えた末のソルの選択は『強化』というスキルだった。
このスキルは生産職である鍛冶師なんかが習得するスキルだ。通常スキルの習得は自分の専門職に近しいスキルを主として選択する。
ソルは剣士である。だから普通は剣士系のスキルを習得するものではあるが。例えば物理攻撃力が上がるような。
しかし、ソルの選択したスキルは『強化』であった。この『強化』というスキルは手に持った物質を強化できる。
通常は鍛冶師が剣をより頑丈にしたり、切れ味や破壊力を増させるために使用するスキルだ。
だが、今のソルには武器らしい武器がない。それも当然だった。ソルはこの裏ダンジョン『ゲヘナ』に廃棄されたのだ。父であるカイは既にソルが死んでいると思っている事であろう。裸同然の状態で捨てられたのだから武器などあるはずもない。
だからまずは武器が必要だった。この『強化』のスキルでソルは武器を作り出そうとしたのである。『強化』のスキルに必要なSPは30pだった。手の届く範囲ではこのスキルを習得するのが現実的な戦略だったのである。
ソルはイルミラージュがいない事を確認し、身を乗り出した。目の前には一本の木の棒が落ちていた。
それなりにしっかりとした木の棒だった。木剣の代わり程度にはなりそうだった。
ソルは『強化』のスキルを発動する。
「強化」
ソルは念じる。スキルで木の棒を強化する。目に見えて木の棒が硬くなったように感じた。木刀よりも硬いくらい。その硬質さはまるで金属のようだ。
試しにソルは目の前にある大岩を叩いてみた。イルミラージュに気づかれるのを恐れ、わざわざ叫び声など出さないが。
ガン! ……良い音がした。斬れこそ当然しない。手がジリジリと痺れた。
だが、強化した木剣は本来なら折れるであろうところ、ビクともしていなかった。無事強化は成功しているようである。
いける……はずだ、多分。
ソルは確信こそ持てないが、最初の時よりは自信を持つ事ができた。
こうして木剣(強化済み)という武器を手に入れたソルは二度目の狩りへ出る事となる。