走って走って、ようやく辿り着いた高架下に、瀬川はいた。
大方の荷物は輸送なのか、スクバを背負い、マフラーに顔を埋めている瀬川は、私が思っていたよりずっと知らない人に見えた。


私は弾む息を押し殺しながら、一歩、一歩、瀬川に近づく。
その足が震えていた。


「せがわ」


あの日瀬川が私の名前を呼んだように、何度も呼んだその名を唇に乗せる。
たった3文字が、どこまでも続く永遠に思えた。


瀬川は弾かれたように顔を上げる。
そして私の姿を認めると、目を伏せ、なんとも言えない表情で苦笑した。

「メロドラかよ」
「……今時流行らないよね」
「HRは?」
「サボった。瀬川と一緒」
「俺サボってねぇから。お前サボり認定ガバガバ過ぎ」


瀬川が、私のために場所を少し譲る。
それが隣に並ぶことを赦されたような気がして、息の仕方を忘れてしまうくらいに胸が詰まった。