「確かに、君が言った通りだ。君の家…司家の事は、調べさせてもらった」
また場所は変わり、今度は車の中である。美斗と桃李が通学用に使っているリムジンの中だ。
あのままだと落ち着いて話ができないというのもあるが、彼女達をあまり長い時間大学にいさせ続けるのもどうかという事で、一旦解散となったのだ。
なお、社長は桃李が手配したハイヤーで、自宅まで送られる事となった。当然だが、ハイヤー代は美斗持ちである。
つまり彼女と社長は完全に別行動だ。彼女と社長は帰り道が完全に逆方向というのもあるが、自分達の都合で拘束してしまったからと、遠慮する社長に対して美斗が譲らなかったからでもある。
そして彼女は美斗の車で送られる事になったのだが、その前に一悶着あった。車で送っていくという美斗に、彼女が難色を示したのである。
「だって『知らない人の車に乗っちゃいけない』って、小学生の時に教わりました」
「小学生とかっていつの時代の話してんだ!お姉ちゃん今幾つだよ!」
「『知らない人』なんて、悲しい事を言わないでくれ」
眉宇に悲しみを滲ませつつ、宥めるように美斗は言った。
「君は俺の鞘。やっと見付けた伴侶だ。俺にとって、君は他人じゃない。何より、俺の都合で遅くまでいさせてしまったというのに、1人で帰らせるのは心配なんだ」
「男の車に乗る事に抵抗があるとは思うよ?でもただ本当に送るだけだから、ここは美斗の気持ちを汲んでもらえないかな?」
「わかりました。弟も一緒に送って下さるなら」
「勿論だ」
美斗の言葉と桃李のフォローに対し彼女が譲歩の条件を示すと、美斗は快諾した。
だがいざ乗車の際にも、このようなやり取りが生じた。
「よし。瑤太は後部座席のドア側に近い場所に乗りなさい。私は助手席に乗るから」
「え?何で?」
「いい機会だし、覚えておきな。車にも上座と下座があるんだよ。運転席の後ろが上座で、ドア側に近いのが下座になる。まあリムジンのポジションは詳しく知らんが、大体そんな感じだ。因みに助手席は一番下座だ」
「俺の伴侶なのに下座に乗せたりしないぞ!?」
「あのさ。遠慮しているんだろうけど、話もしたいから、弟君と一緒に後部座席に乗ろう?」
と、これまた一悶着になりかけたものの、彼女は渋々ながらも後部座席に落ち着いた。勿論だが、美斗の隣である。尤も、可能な限り距離を空けての位置にいるが。
彼女の距離感に対し、美斗は何か言いたそうな顔をしていたが、それでも話を切り出した。
「君が結婚を無理だと言ったのは…その。ご両親の離婚の事か?」
「霊術士達は、いわば『力ある空の器』だと思っています。つまり、保護者の情愛なり何なり『一番最初に何を注ぐかが重要』という事です」
いきなり口を開いたかと思うと、そこまで言い切った彼女は、ふーうと大きく溜め息をついた。
「私の場合、注がれたのが一番身近な異性、つまり父親に対する不信感だったんですよ」
彼女は「まあ父親と呼びたくすらありませんが」と、嫌悪を隠しもしない口調で吐き捨てた。
また場所は変わり、今度は車の中である。美斗と桃李が通学用に使っているリムジンの中だ。
あのままだと落ち着いて話ができないというのもあるが、彼女達をあまり長い時間大学にいさせ続けるのもどうかという事で、一旦解散となったのだ。
なお、社長は桃李が手配したハイヤーで、自宅まで送られる事となった。当然だが、ハイヤー代は美斗持ちである。
つまり彼女と社長は完全に別行動だ。彼女と社長は帰り道が完全に逆方向というのもあるが、自分達の都合で拘束してしまったからと、遠慮する社長に対して美斗が譲らなかったからでもある。
そして彼女は美斗の車で送られる事になったのだが、その前に一悶着あった。車で送っていくという美斗に、彼女が難色を示したのである。
「だって『知らない人の車に乗っちゃいけない』って、小学生の時に教わりました」
「小学生とかっていつの時代の話してんだ!お姉ちゃん今幾つだよ!」
「『知らない人』なんて、悲しい事を言わないでくれ」
眉宇に悲しみを滲ませつつ、宥めるように美斗は言った。
「君は俺の鞘。やっと見付けた伴侶だ。俺にとって、君は他人じゃない。何より、俺の都合で遅くまでいさせてしまったというのに、1人で帰らせるのは心配なんだ」
「男の車に乗る事に抵抗があるとは思うよ?でもただ本当に送るだけだから、ここは美斗の気持ちを汲んでもらえないかな?」
「わかりました。弟も一緒に送って下さるなら」
「勿論だ」
美斗の言葉と桃李のフォローに対し彼女が譲歩の条件を示すと、美斗は快諾した。
だがいざ乗車の際にも、このようなやり取りが生じた。
「よし。瑤太は後部座席のドア側に近い場所に乗りなさい。私は助手席に乗るから」
「え?何で?」
「いい機会だし、覚えておきな。車にも上座と下座があるんだよ。運転席の後ろが上座で、ドア側に近いのが下座になる。まあリムジンのポジションは詳しく知らんが、大体そんな感じだ。因みに助手席は一番下座だ」
「俺の伴侶なのに下座に乗せたりしないぞ!?」
「あのさ。遠慮しているんだろうけど、話もしたいから、弟君と一緒に後部座席に乗ろう?」
と、これまた一悶着になりかけたものの、彼女は渋々ながらも後部座席に落ち着いた。勿論だが、美斗の隣である。尤も、可能な限り距離を空けての位置にいるが。
彼女の距離感に対し、美斗は何か言いたそうな顔をしていたが、それでも話を切り出した。
「君が結婚を無理だと言ったのは…その。ご両親の離婚の事か?」
「霊術士達は、いわば『力ある空の器』だと思っています。つまり、保護者の情愛なり何なり『一番最初に何を注ぐかが重要』という事です」
いきなり口を開いたかと思うと、そこまで言い切った彼女は、ふーうと大きく溜め息をついた。
「私の場合、注がれたのが一番身近な異性、つまり父親に対する不信感だったんですよ」
彼女は「まあ父親と呼びたくすらありませんが」と、嫌悪を隠しもしない口調で吐き捨てた。