街まで戻ってきた僕たちはそのままハンターギルドへと向かった。
今回の聖獣討伐に関して、報告しなければならないことが山ほどあったからだ。玄武はいつものように胸ポケットへ、白虎はさらに小型になってもはや白いトラ柄の猫だ。このサイズだと僕が歩く方が速いので、肩に乗せている。
これもやはり、ほかの人の肩には乗らないとドヤ顔で語られた。僕にだけ懐いてる野良猫みたいだ。そう考えると可愛いく思えてくる。
「クラウス、正式に魔皇帝だとみんなに紹介してもいいかな? その場合、ボクも然るべき態度になるんだけど……」
「いいですよ、もう自分から名乗りましたし」
「よかった、助かるよ。ギルドについたら——」
そんな話をしながら、ハンターたちを引き連れて街の大通りを歩いていた。
「其方たちがシューヤ・モスリンとクラウス・フィンレイ殿か?」
突然、頭上から声が降ってくる。
馬車が走る道から単騎の白馬に乗った、身なりのいい中年男性が鋭い瞳を僕たちに向けていた。威厳にみちた精悍な顔立ちは、相手に有無を言わせぬ強さがある。まるでセントフォリアの大聖女様のようだ。
「えっ……国王陛下!? 失礼いたしました。私がシューヤ・モスリンでございます」
シューヤさんが驚いて口にした言葉に、僕も一瞬思考がとまった。
え、国王陛下? もしかしてこの国の国王陛下なの?
「ぼ、僕がクラウス・フィンレイです」
シューヤさんが膝をついたので、慌てて僕も膝をつく。一般的な平民が国王陛下に会うことなど、ほとんどない。……ないはずだよね?
いや、もうハンターギルドで魔皇帝だと名乗った後だ。そういえば、受付のお姉さんがギルド長に報告してた。まさか、あれが今の事態を引き起こしてる?
すると国王陛下がサッと馬から降りて、僕を立たせた。その上で、今度は国王陛下が膝をついて、僕に頭を垂れた。
「魔皇帝クラウス・フィンレイ様。ご挨拶が遅れ誠に申し訳ございません。私がヒューデント王国の国王、アルフレッド・ソル・ヒューデントでございます」
うわ————!! やっぱりそうなるよね!?
気付いたら僕以外みんな膝をついてるし!! アホン伯爵さえ頭を下げてるし!! 国王陛下を追ってきた近衛騎士たちも膝をついてるし!!
そろそろ恒例になりつつある、いつものお願いをしてみる。
「あの、まずは頭を上げてもらえませんか? それから僕は普通にしてもらいたいんです。だから、あまり大袈裟にされるのはやめてほしいのですが……」
「ははっ! 左様か。クラウス様はなかなか謙虚なお方だな。ではお言葉に甘えて、畏まった態度は改めよう。皆も面をあげよ」
ここでようやくいつも通りの景色に戻る。ひとりだけ立っているのは、ちょっといたたまれない。
「クラウス殿、このまま我が城に招待したいのだがよろしいか?」
突然のアルフレッド国王からの申し出に、頷いていいのか悩んでしまった。見かねたシューヤさんがそっと耳打ちしてくれる。
「クラウス様、ここは申し出を受けた方がよろしいかと」
「うーん、わかった。それでは僕からもお話ししたいことがあります。聖獣白虎の討伐の件です」
「なに……? 白虎の、討伐だと?」
途端に険しい表情になり、アルフレッド国王から怒気があふれだした。これを見たアホン伯爵の顔色は、青を通り越して白くなっている。
「はい、詳しい話はシューヤさんから聞いてほしいのですが、僕も思うところがあるのでお時間をいただけますか?」
「もちろんだ。では関係者はこのまま一緒に城にきてもらおう。クラウス様とそのお連れ様も賓客として迎えよう」
そうして僕たちとハンターギルドの一行、アホン伯爵は王城へと招かれた。
連れてこられたのは大きな円卓のある会議室だった。
国が違えば趣向も変わるようで、セントフォリアとは違う豪華さだ。だけど今この部屋に流れている空気はリアルに肌に突き刺さるほどビリビリとしていた。
実際にアルフレッド国王から雷属性の魔力が漏れ出している。地味に痛い。僕はこっそりと仲間たちにリジェネをかけた。みんなの眉間の皺が取れていく。
「誠に聖獣の討伐に向かったのか……アホン伯爵」
唸るような低い声でアルフレッド国王は、アホン伯爵に問いかけた。
「はっ、はひ! あの、聖獣だという証拠もありませんでしたし……その、危険だと思ったので……」
アホン伯爵は真っ白い顔から、土色の顔色になっている。いよいよヤバいんじゃないだろうか。
「シューヤ・モスリン殿。確認だが聖獣の守人として白虎で間違いないと報告は上げていたのだな?」
「はい。白虎が目覚めたと確認した際に、祖国セントフォリアとこちらのハンターギルドを通して報告しております。必要であれば祖国にもご確認ください」
「ふむ、問題ない。私も白虎の目覚めについては報告を受けている。それなのに何故、アホン伯爵は白虎でないと思い込んだのか教えてくれるか?」
ギロリと鋭い視線が、アホン伯爵に注がれた。
「そ、それはっ、その、シューヤが……あまりにも弱くて、まさか本当に聖獣の守人だとは……」
最後の方はポソポソと聞こえづらかった。アホン伯爵は恐らく白虎との戦いを目の前で見て、シューヤさんが全部本当のことを話していたのだと理解したのだろう。
「なにを言っておるのだ? 聖獣の守人は代々Sランク冒険者と同等のセブンスハンターだ」
「は……? セブンスハンターですと? いや、そんなまさか……!」
え、そこは理解してなかったのか? あれだけ白虎の攻撃をさばいて、ハンターたちにも気を配っていたのに。
「アホン伯爵、僕もシューヤさんの実力はSランクハンターで間違いないと思います。それに、一番許せないのは僕の大切な仲間を薄汚いとか弱いとか馬鹿にしたことです。それだけは撤回してほしいです」
「なんと愚かな……そのような態度であったのか。クラウス殿、誠に申し訳ない。我が国の民が大変失礼なことを申した」
そう言って、頭を下げてくれた。
国王の謝罪に周りが騒然とする。それはそうだろう、一国の主人が頭を下げるなんてありえないことだ。
「いえ! あの発言さえ撤回してもらって、今後は態度を改めてもらえれば構いませんから!」
「むう、それでは私の気がおさまらん。アホン伯爵、貴様の爵位は息子に譲って引退し領地に戻れ。そこから一歩でも外に出ることは私が許さん」
「そっ! そんな!! 申し訳ありません!! アルフレッド国王陛下! なにとぞお考え直しを!!」
「……本来であれば国外追放のところを、クラウス殿の寛大な進言でこの処置にしておるのだとわからんか? ご苦労であった。アホン元伯爵」
この言葉でアホン伯爵はなにも言えなくなっていた。アルフレッド国王の指示を受けた近衛騎士たちが、アホン元伯爵を会議室から連れ出していく。発言の撤回もなく態度も変わらなかったけど、強制引退によってシューヤさんが平和になるならいいかと納得した。
一緒に討伐に向かったハンターたちは、アホン元伯爵の命令に逆らえなかったと確認できたので、今回はお咎めなしだ。
「お見苦しいところを見せたな。さて、今宵はここで休んでいかれるといい。夜は宴を開くからそれまではゆるりと過ごしてもらえるか?」
「はい、ありがとうございます」
それぞれひとりずつ部屋が用意されて、僕たちは夕方までゆっくりと過ごした。
宴が始まる三時間前には準備のために侍女や侍従が派遣され、風呂に入れられされるがままになっている。どこで測ったのかサイズぴったりのフォーマルな衣装に着せ替えられた。
髪もセットされ、ボサボサだった頭が丁寧に後ろに流されている。
「クラウス様、これにて準備が整いました。はあ、なんと凛々しいお姿でしょう! 我が国の姫様たちも見惚れてしまいますぞ」
「いやいやいや、お世辞が上手いですね。でも褒めていただいてありがとうございます」
「いえ、お世辞ではなく本当に——」
そこでノックの音が響き、宴の会場に案内された。
宴というか国の重鎮たちがあつまる夜会だったと知ったのは、入場する時だった。
「魔皇帝クラウス・フィンレイ様、ご入場——!!!!」
入り口のところでラッパが鳴らされ、一斉に会場中の視線が集まる。
よく見るとウルセルさんもセレナもシューヤさんも、ドレスアップした格好ですでに入場していた。ちょっと僕だけ後からとか勘弁してほしい。
なんて思ったのは一瞬だ。
「魔皇帝様あああ!! 素敵いいい!!」
「あれが噂の名君、魔皇帝クラウス様か! なんと凛々しいお姿なのだ!」
「そうだ、名君と名高い魔皇帝様だ。夜明けのような瞳もなんと美しい!」
「魔皇帝様……! カッコよすぎるわー!!」
「まだ婚約者はいないみたいよ! ちょっと私声かけて……」
「淑女たるもの落ち着きなさい。私が先にお声がけするわ」
「抜け駆けはなしよ!! いっそクラウス様を褒め称える会にしましょう!!」
「「いいわね!!」」
会場にひしめくのは、おそらくヒューデント王国の貴族たちだ。夜会用のキラッキラした衣装が眩しい。大ホールの中はすでに狂喜乱舞状態だ。
は? はあああ!? まさか、またこのパターンだったの——!?
こんなに貴族の方が集まってるなんて聞いてない……!!
しかも名君ってなに!? なんか会が発足されてる!?
お願いだから、そっとしておいて…………!!
僕の願いが叶えられることは今後もないのだが、その発端がごく身近な人物だとはつゆほども思わなかった。
今回の聖獣討伐に関して、報告しなければならないことが山ほどあったからだ。玄武はいつものように胸ポケットへ、白虎はさらに小型になってもはや白いトラ柄の猫だ。このサイズだと僕が歩く方が速いので、肩に乗せている。
これもやはり、ほかの人の肩には乗らないとドヤ顔で語られた。僕にだけ懐いてる野良猫みたいだ。そう考えると可愛いく思えてくる。
「クラウス、正式に魔皇帝だとみんなに紹介してもいいかな? その場合、ボクも然るべき態度になるんだけど……」
「いいですよ、もう自分から名乗りましたし」
「よかった、助かるよ。ギルドについたら——」
そんな話をしながら、ハンターたちを引き連れて街の大通りを歩いていた。
「其方たちがシューヤ・モスリンとクラウス・フィンレイ殿か?」
突然、頭上から声が降ってくる。
馬車が走る道から単騎の白馬に乗った、身なりのいい中年男性が鋭い瞳を僕たちに向けていた。威厳にみちた精悍な顔立ちは、相手に有無を言わせぬ強さがある。まるでセントフォリアの大聖女様のようだ。
「えっ……国王陛下!? 失礼いたしました。私がシューヤ・モスリンでございます」
シューヤさんが驚いて口にした言葉に、僕も一瞬思考がとまった。
え、国王陛下? もしかしてこの国の国王陛下なの?
「ぼ、僕がクラウス・フィンレイです」
シューヤさんが膝をついたので、慌てて僕も膝をつく。一般的な平民が国王陛下に会うことなど、ほとんどない。……ないはずだよね?
いや、もうハンターギルドで魔皇帝だと名乗った後だ。そういえば、受付のお姉さんがギルド長に報告してた。まさか、あれが今の事態を引き起こしてる?
すると国王陛下がサッと馬から降りて、僕を立たせた。その上で、今度は国王陛下が膝をついて、僕に頭を垂れた。
「魔皇帝クラウス・フィンレイ様。ご挨拶が遅れ誠に申し訳ございません。私がヒューデント王国の国王、アルフレッド・ソル・ヒューデントでございます」
うわ————!! やっぱりそうなるよね!?
気付いたら僕以外みんな膝をついてるし!! アホン伯爵さえ頭を下げてるし!! 国王陛下を追ってきた近衛騎士たちも膝をついてるし!!
そろそろ恒例になりつつある、いつものお願いをしてみる。
「あの、まずは頭を上げてもらえませんか? それから僕は普通にしてもらいたいんです。だから、あまり大袈裟にされるのはやめてほしいのですが……」
「ははっ! 左様か。クラウス様はなかなか謙虚なお方だな。ではお言葉に甘えて、畏まった態度は改めよう。皆も面をあげよ」
ここでようやくいつも通りの景色に戻る。ひとりだけ立っているのは、ちょっといたたまれない。
「クラウス殿、このまま我が城に招待したいのだがよろしいか?」
突然のアルフレッド国王からの申し出に、頷いていいのか悩んでしまった。見かねたシューヤさんがそっと耳打ちしてくれる。
「クラウス様、ここは申し出を受けた方がよろしいかと」
「うーん、わかった。それでは僕からもお話ししたいことがあります。聖獣白虎の討伐の件です」
「なに……? 白虎の、討伐だと?」
途端に険しい表情になり、アルフレッド国王から怒気があふれだした。これを見たアホン伯爵の顔色は、青を通り越して白くなっている。
「はい、詳しい話はシューヤさんから聞いてほしいのですが、僕も思うところがあるのでお時間をいただけますか?」
「もちろんだ。では関係者はこのまま一緒に城にきてもらおう。クラウス様とそのお連れ様も賓客として迎えよう」
そうして僕たちとハンターギルドの一行、アホン伯爵は王城へと招かれた。
連れてこられたのは大きな円卓のある会議室だった。
国が違えば趣向も変わるようで、セントフォリアとは違う豪華さだ。だけど今この部屋に流れている空気はリアルに肌に突き刺さるほどビリビリとしていた。
実際にアルフレッド国王から雷属性の魔力が漏れ出している。地味に痛い。僕はこっそりと仲間たちにリジェネをかけた。みんなの眉間の皺が取れていく。
「誠に聖獣の討伐に向かったのか……アホン伯爵」
唸るような低い声でアルフレッド国王は、アホン伯爵に問いかけた。
「はっ、はひ! あの、聖獣だという証拠もありませんでしたし……その、危険だと思ったので……」
アホン伯爵は真っ白い顔から、土色の顔色になっている。いよいよヤバいんじゃないだろうか。
「シューヤ・モスリン殿。確認だが聖獣の守人として白虎で間違いないと報告は上げていたのだな?」
「はい。白虎が目覚めたと確認した際に、祖国セントフォリアとこちらのハンターギルドを通して報告しております。必要であれば祖国にもご確認ください」
「ふむ、問題ない。私も白虎の目覚めについては報告を受けている。それなのに何故、アホン伯爵は白虎でないと思い込んだのか教えてくれるか?」
ギロリと鋭い視線が、アホン伯爵に注がれた。
「そ、それはっ、その、シューヤが……あまりにも弱くて、まさか本当に聖獣の守人だとは……」
最後の方はポソポソと聞こえづらかった。アホン伯爵は恐らく白虎との戦いを目の前で見て、シューヤさんが全部本当のことを話していたのだと理解したのだろう。
「なにを言っておるのだ? 聖獣の守人は代々Sランク冒険者と同等のセブンスハンターだ」
「は……? セブンスハンターですと? いや、そんなまさか……!」
え、そこは理解してなかったのか? あれだけ白虎の攻撃をさばいて、ハンターたちにも気を配っていたのに。
「アホン伯爵、僕もシューヤさんの実力はSランクハンターで間違いないと思います。それに、一番許せないのは僕の大切な仲間を薄汚いとか弱いとか馬鹿にしたことです。それだけは撤回してほしいです」
「なんと愚かな……そのような態度であったのか。クラウス殿、誠に申し訳ない。我が国の民が大変失礼なことを申した」
そう言って、頭を下げてくれた。
国王の謝罪に周りが騒然とする。それはそうだろう、一国の主人が頭を下げるなんてありえないことだ。
「いえ! あの発言さえ撤回してもらって、今後は態度を改めてもらえれば構いませんから!」
「むう、それでは私の気がおさまらん。アホン伯爵、貴様の爵位は息子に譲って引退し領地に戻れ。そこから一歩でも外に出ることは私が許さん」
「そっ! そんな!! 申し訳ありません!! アルフレッド国王陛下! なにとぞお考え直しを!!」
「……本来であれば国外追放のところを、クラウス殿の寛大な進言でこの処置にしておるのだとわからんか? ご苦労であった。アホン元伯爵」
この言葉でアホン伯爵はなにも言えなくなっていた。アルフレッド国王の指示を受けた近衛騎士たちが、アホン元伯爵を会議室から連れ出していく。発言の撤回もなく態度も変わらなかったけど、強制引退によってシューヤさんが平和になるならいいかと納得した。
一緒に討伐に向かったハンターたちは、アホン元伯爵の命令に逆らえなかったと確認できたので、今回はお咎めなしだ。
「お見苦しいところを見せたな。さて、今宵はここで休んでいかれるといい。夜は宴を開くからそれまではゆるりと過ごしてもらえるか?」
「はい、ありがとうございます」
それぞれひとりずつ部屋が用意されて、僕たちは夕方までゆっくりと過ごした。
宴が始まる三時間前には準備のために侍女や侍従が派遣され、風呂に入れられされるがままになっている。どこで測ったのかサイズぴったりのフォーマルな衣装に着せ替えられた。
髪もセットされ、ボサボサだった頭が丁寧に後ろに流されている。
「クラウス様、これにて準備が整いました。はあ、なんと凛々しいお姿でしょう! 我が国の姫様たちも見惚れてしまいますぞ」
「いやいやいや、お世辞が上手いですね。でも褒めていただいてありがとうございます」
「いえ、お世辞ではなく本当に——」
そこでノックの音が響き、宴の会場に案内された。
宴というか国の重鎮たちがあつまる夜会だったと知ったのは、入場する時だった。
「魔皇帝クラウス・フィンレイ様、ご入場——!!!!」
入り口のところでラッパが鳴らされ、一斉に会場中の視線が集まる。
よく見るとウルセルさんもセレナもシューヤさんも、ドレスアップした格好ですでに入場していた。ちょっと僕だけ後からとか勘弁してほしい。
なんて思ったのは一瞬だ。
「魔皇帝様あああ!! 素敵いいい!!」
「あれが噂の名君、魔皇帝クラウス様か! なんと凛々しいお姿なのだ!」
「そうだ、名君と名高い魔皇帝様だ。夜明けのような瞳もなんと美しい!」
「魔皇帝様……! カッコよすぎるわー!!」
「まだ婚約者はいないみたいよ! ちょっと私声かけて……」
「淑女たるもの落ち着きなさい。私が先にお声がけするわ」
「抜け駆けはなしよ!! いっそクラウス様を褒め称える会にしましょう!!」
「「いいわね!!」」
会場にひしめくのは、おそらくヒューデント王国の貴族たちだ。夜会用のキラッキラした衣装が眩しい。大ホールの中はすでに狂喜乱舞状態だ。
は? はあああ!? まさか、またこのパターンだったの——!?
こんなに貴族の方が集まってるなんて聞いてない……!!
しかも名君ってなに!? なんか会が発足されてる!?
お願いだから、そっとしておいて…………!!
僕の願いが叶えられることは今後もないのだが、その発端がごく身近な人物だとはつゆほども思わなかった。