中学1年生が終わり、2年生になった。佐野と美桜ちゃんとまた一緒のクラスになった。私は美桜ちゃんといつしか仲良くなり、このクラスになってから新しく大森 結愛(おおもり ゆあ)とも仲良くなり、いつも3人で行動するようになった。前までは人間関係とか避けてきたけど、やってみれば以外に出来るものだと思った。今はクラスの女子と普通に話せるようにまでなった。

「あの、山本さん鉛筆落としましたよ」

「上田ありがとう!」

彼は私の隣の席の上田 颯真(うえだ そうま)だ。少しミステリアスでいつも何を考えているんだろうと気になってしまう。物静かだけど友達も多い。不思議な子だ。気づいたら目で追ってしまっている。上田と話すたび心臓がドクドク動く。なんだろうこの感覚......。

「紗菜〜早く行こ!」

「紗菜ちゃん急がなくてもいいよ〜」

次の授業は移動教室なので美桜と結愛ちゃんが私を呼んでいた。

「うん行こ!」

教室に着くまでなにげない会話が続いた。そして話題はいつしか恋バナになった。美桜は恋愛が好きなのだ。

「紗菜と結愛は好きな人いないの?」

結愛ちゃんが口を開いた。

「私は違うクラスにいるかな」

結愛ちゃんの好きな人か、どんな人だろう。すると美桜が私の方を見てきた。

「紗菜はいないの?」

「え、私?」

「上田とはどうなの? いい感じじゃなーい?」

「そんなんじゃないし」

好きとか分かんないし、上田は不思議な子だから気にしてしまうだけ。

「美桜はいないの?」

「私は佐野かな、運動神経いいし、かっこいいし」

「美桜って佐野の事好きなんだ」

「美桜ちゃんと佐野お似合いだよ」

私は少し驚いた。でもすごくお似合いだ。美男美女って感じ。そして教室に着いた。チャイムが鳴り私は板書をしていた。するとふと上田と目が合った。私は心臓がドクドク鳴った。気のせいだと思ったけど、止まらなかった。もしかしてこれが恋なのか?これが好きという感情なのか。顔が熱くなった。今日の授業が全て終わり、私は家に帰った。

自分の部屋に行き、本を読み始めた。だけど全然集中できない。上田がどうしても頭に出てくる。私は居ても立っても居られなくなり、明日告白することにした。やっぱり気持ちは伝えないとモヤモヤしてしまう。そして翌日になった。教室に上田が入ってきた。

「上田、ちょっといい?」

教室にはまだ誰もいなかったので誘いやすかった。

「どうしたの山本さん」

「あの、私上田の事が好きです。付き合ってください」

「え、ご、ごめんなさい」

振られてしまった。失恋ってこういう気持ちなんだ。悲しい、私は涙をこらえた。そして私たちは教室に入った。上田は私の隣の席なので余計に気まずかった。しばらくすると美桜と結愛ちゃんが教室に入ってきた。

「おはよー紗菜」

「おはよう。紗菜ちゃん!」

「おはよー美桜と結愛ちゃん」

するといきなり教室のドアが勢いよく開いた。佐野が教室に入ってきて私の元に向かってきた。え、何?そして佐野は私の腕を掴み、私は階段の方へ連れて行かれた。佐野を見ると耳がかすかに赤くなっていた。

「なあ、俺山本の事が好きだ。付き合ってくれ」

え、今告白された?あの佐野が私なんかを?嘘コクか何かかな。だが佐野を見るとどうやら本気みたいだ。どうしよう、私にはもったいなさすぎるよね、だけどせっかく気持ちを伝えてくれたので私は告白を受け止める事にした。

「こんな私で良ければよろしくね」

「よっしゃーありがとうよろしくな」

これ夢じゃないよね、ほっぺをつねったが現実だった。そろそろチャイムが鳴るので私と佐野は教室に戻った。美桜の様子がどこか冷たかった。気のせいかな。

私は休み時間に美桜に喋りかけにいこうとした。すると美桜は結愛と一緒に教室を出てしまった。あ、用事でもあったのかな......。私も行きたかった。佐野が私の方に来て喋りかけてきた。

「山本さ、今週の土曜日空いてる? もし良かったら遊びに行かない?」

「え!? 行きたい!」

「じゃあ9時ぐらいにショッピングモール集合で」

「分かった!」

ショッピングモールはあまり好きではないがこの際いいだろう。あー、もっと可愛くなりたいな。当日は可愛い服も着たい。オシャレや美容には興味がなかったけど、なんだか今回は頑張りたくなった。学校が終わり私は家に帰った。自分の部屋に行き、クローゼットを見た。うーん、今までオシャレには興味がなかったため今の流行りなど全然分からない。服はお姉ちゃんの物を借りようと思った。次に顔や体型だ。少しでも可愛くなるためにお菓子を控えたり、顔のマッサージをする事にした。

そして土曜日になり、私はショッピングモールの入り口で佐野を待っていた。なんだか緊張するな。髪型変じゃないよね、服派手すぎない?大丈夫だよね。いつもならモノトーンの色の服を来ているが、今日は勇気を出して黄色のワンピースに挑戦し。髪も高めに結んだ。少しすると佐野が来た。

「ごめん、お待たせ」

「ううん、大丈夫!」

「山本のこと下の名前で呼んでもいい?」

「うん! いいよ」

「じゃあ俺のことも下の名前でよろしくな」

「分かった!」

そして私たちはショッピングモールの中に入った。佐野と付き合う事になるなんて思ってもいなかった。佐野の下の名前って確か朝陽だったよね。朝陽の私服は意外にもオシャレだったので、改めて私の服が変じゃないか確認する。すると朝陽はアクセサリーのお店に入って行ったので私も着いていく。

「これ紗菜にすげえ似合う」

朝陽が手元に持ったのは、お花の形のネックレスだった。こんなに可愛くて綺麗な物私なんかには似合わないよ、でも首元にネックレスを当てて鏡を見た。すると少しだけ似合うんじゃないかと思った。朝陽が似合うって言ってくれたから?

「本当?」

「うん、俺買ってくるよ」

「え、いいよ私が買うから」

「俺が買う!」

払わせるなんて申し訳ないよ、だけどせっかく買ってくれると言ってくれたのでお言葉に甘える事にした。私はお店の外で待っていることにした。そしてお会計を終えた朝陽が戻ってきてネックレスを着けてくれた。すごく距離が近かったので顔が熱くなった。

「ありがとう」

「やっぱり似合ってるよ」

アクセサリーを着けたのはこれが初めてだ。お母さんやお姉ちゃんはイヤリングや指輪など着けていたが、私はめんどくさいので今まで着けてこなかった。だけどこれはめんどくさいなんて思わない。すごく可愛くて一生着けていたいと思った。そして私たちはお腹が空いたので、ファミリーレストランに入った。それからたわいな話をした。そういえば朝陽はどうして私みたいな人を好きになったをんだろう。

「朝陽ってどうして私を好きになったの?」

朝陽は耳を赤らめた。本当に私の事が好きなんだなと思った。

「俺紗菜の笑った顔を初めて見た時、一気に好きになったんだ。可愛いし」

「え!? 私全然可愛くないよ?」

「いや、紗菜は可愛いよ。 もっと自信を持ってもいいと思う」

私が、可愛い?自信を持て?本心で言っているのかな、だけど少しだけ心が軽くなった気がした。このネックレスにもっと似合うようになりたいな。私たちはご飯を食べ終えてお店を出た。そしてそろそろ帰ることになった。

「じゃあまたなっ」

「うん! ありがとう」

「おう!」

今日は本当に楽しかった。このネックレスすごく可愛いな。朝陽は私にすごく自信をくれる。朝陽といるとなんだか可愛くなれる気がした。私もっと自分を磨いていこう。家に着いて自分の部屋に行き、大切にネックレスを机にしまった。自然に顔がにやけてしまう。お姉ちゃんはこんな気持ちだったんだ。私は夜ご飯を食べ、お風呂に入り、早く寝た。

月曜日になり私は朝食を食べ終えて玄関のドアを開けた。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

教室に着き私は1限目の用意をして、友達の所に行きしばらく話していた。すると美桜と結愛ちゃんが教室に入ってきた。

「おはよ美桜! 結愛ちゃん」

「........」

「おはよう紗菜ちゃん」

え、今美桜に無視された?私なんか怒らせるようなことした?とりあえず美桜の所に駆け寄った。なんだか美桜は雰囲気がいつも違った。

「美桜?私なんか怒らせるようなことしちゃった?」

「........」

どうして?すると美桜は口を開いた。

「酷いよ紗菜」

私やっぱり何かしちゃったのかな。だけど覚えがない。再び美桜は口を開いた。

「私、佐野の事好きって言ってたのにどうして取ったの?」

「大体、紗菜みたいな地味な子じゃ佐野とは釣り合わないよ?」

え、優しかった美桜はもうここにいなかった。美桜はこの前の恋バナでそんな事を言っていたのを思い出した。だけど佐野は誰のものでもないし、取っただなんて........。しかも美桜の本心を知ってしまった。やっぱり私は地味な子なんだ。美桜だけじゃない、皆も私と佐野じゃ釣り合わないって思っているに違いない。美桜の立場を考えたら確かに苛つくのも分かる。私は涙が溢れてきた。クラスの皆は私と美桜を見ている。もうここに居たくない。私は走って教室のドアを開けた。すると丁度朝陽と対面してしまった。最悪だ、泣いてる顔なんて見せたくない。私はそのままトイレに逃げようと思った。だけど朝陽に止められてしまった。どうやら朝陽はさっきの会話を聞いていたらしい。朝陽は私を連れて美桜の所に行った。

「村上、紗菜に謝ってくれないかな」

「え? なんで佐野が入ってくるわけ?」

「いいから謝ってほしい」

「........ごめん紗菜」

「俺の彼女を気づ付けないでくれるかな」

美桜の表情はすごく暗かった。当然だろう。好きな人にきつい事を言われてしまいショックを受けたに違いない。謝ってはくれたものの私ももう少し人の気持ちを理解した方がいいと思った。だけど美桜にあんな事を言われるなんて、これからどう接せればいいの?そしてチャイムが鳴った。今日は美桜に近づくのはやめておこう。私は一緒の班の子と過ごすことにした。全ての授業が終わり私は鞄を持って教室を出た。すると朝陽が走ってきた。そして一緒に帰ることになった。帰り道が一緒だったので嬉しかった。空を見ると夕焼けの空が私たちを照らしていた。

「紗菜今日は散々だったな」

「う、うん朝陽ありがとね」

「彼氏として当然のことだよ」

朝陽は勇気があってすごいな。私ももっと素敵な人間になれたらいいのに。

「私、もっと朝陽にふさわしい彼女になれるように頑張るね」

「ううん、紗菜は今のままで良いよ。今のままでいて欲しい」

その言葉を聞いて救われた気がした。涙が出そうになった。朝陽は優しいな、こんな私を認めてくれるなんて。

「朝陽......ありがとう」

そして朝陽と道を別れ、歩いていた。すると後ろから私を呼ぶ声がした。どうやらその声は美桜だった。また何か言われちゃうの?美桜が口を開いた。

「紗菜......ごめん、私紗菜に嫉妬してて自分の感情を止められなかった。本当に私酷い女よね、ごめんなさい」

「私こそ、ごめんね」

「紗菜は謝らなくていい、私これからは2人を応援することに決めた」

「え、応援? ありがとう美桜」

美桜はそう言って走って行ってしまった。恋愛って人を変えちゃうんだ、良くも悪くも。美桜は応援するって言ってくれたけど、心の底ではきっと納得してないよね。だけど私は美桜の分も朝陽と幸せになりたい。ずっとずっと朝陽と一緒にいたい。こんな私を好きになってくれてすごく嬉しい。つい最近までは過去に囚われてしまっていたのに、いつしか今を見るようになってきた。朝陽と出会ってから毎日が楽しかった。過去の思い出も大切だけど、今は今しかないから、その一瞬一瞬を大切にしていきたいと思った。