「青白い炎は冷たさにも似た冷徹な炎じゃ、決して冷たく無いその熱は次第に灼熱へと姿を変え最後には白く成り消える。まるで人と同じじゃな小僧」
「どういう意味だ?」
「そのままじゃ、人とはなんとももろく儚い。だからこそ弱く力を欲する。力を手に入れる代償が廃人じゃて……真意を理解せずに炎を使えば灰塵と化す」

 その言葉にアデルはとある噂を思い出す、二年前の話だった。

「噂で聞いた事有るな、法術未鍛錬者が己のエーテル貯蔵量に過信しすぎて大法術を使い、エーテルが暴走して自身すらをも焼き殺す事件が。確かその時の法術者は骨すら残らなかったと聞く」
「近いものがあるのぉ、それは単純にエーテルバーストしただけだろう。だが例えとしては悪く無い。術とは己の中にある魔力の源エーテルの残量によって変わる。カルナックも言うてた通りじゃがワシ等は術使用者を喰らう事も有る、その結果人では無い何かに変貌させてしまう事もしばしばじゃ」

 右手を握ると炎はブワっと風に流れ姿を消した。アデルは難しそうな顔をしてその場にあぐらをかいた。

「俺は頭が悪いと言っただろう、もっと分かりやすく説明できねぇか爺さん」
「ふむ、ならば実際に体で覚えて貰おうか」
「体で覚える?」



「剣聖、あれからずいぶんと時間が経つけどいつまで続くんだ?」

 部屋の出入りを禁じられた二人は居間でカルナックとアリスと四人で過ごしていた。あれからさらに数時間は経つだろうか、その時間がやけに長く感じられた。

「分かりません、三十分後かもしれませんし明日かもしれません。もしくは来月、来年……」
「二人次第ってことかよ、大そうな術だなしかし」

 ガズルがソファーに寄りかかって悪態をつく、それを横目にカルナックはため息を一つ。