ゆっくりと業火の中を二人は歩いていく、次第にその業火は姿を縮小させていく。

「主らが住んでいるこの星は後何億年かすれば恒星に飲まれるだろう、それが終焉の炎じゃ」
「なら俺には関係のない話だな、その時代まで生きてる自信はない」

 アデルが横に流れる業火の川を見ながらそういった。

「お主が今まで作ってきた炎はワシの本の一部じゃ、インストールとはワシを理解しワシと契約を交わしワシを知ることに始まる。それの使い手がどんな理想を抱きどんな使い方をしようとワシの知るところではない」
「それが例えこの世界の秩序を破壊して世界を壊そうとしてもか?」
「関係の無い話じゃ、ワシは貴様ら人の中に生きておる。仮に世界が崩壊したところでワシは人、大地、恒星の下で作られる。ワシは一人じゃ無いのじゃよ小僧」

 老人が立ち止まった、同時に回りに流れる業火の炎はブワっと風にかき消されたように姿を消した。

「小僧、ワシを理解できるか?」
「……」
「貴様はワシを知ろうとするか?」

 老人は手に持つ杖をアデルに突きたてた。それを眉一つ動かさずアデルは老人の顔を見つめていた。

「愚問だったようじゃな」
「必要とあれば俺は修羅にでもなるさ、爺さんを理解する事は時間がかかるだろうけどな」
「修羅か、悪鬼と言えばまだ聞こえも良かろうて」

 老人はそう言い残して笑った、対してアデルは先ほどと同じように老人の顔だけを見つめてその場をピクリとも動かない。

「では本題に入ろうかのう。炎とは始まりであり終焉である、これは先も述べたとおりじゃ。問題はこの先、それを扱う者の意思次第で炎は姿を変える」

 老人は右手を前に持ってくると手のひらを上に向けた。すると青白い炎が手の平からあふれ出した。次第にそれは紫色に成り、だんだん白く色を変色させていく。