それは暗く、何も無い空間だった。
 あたりを見渡しても何も見えない、ただ真っ暗な空間がそこに広がっていた。それを虚無と呼ぶのかはたまた宇宙と呼ぶのかは人それぞれでは有ると思う。だが彼は違った、その空間の中には彼でも感じることが出来るほど大量なエレメントが浮かんでいる。

「……結構歩いたな」

 黒い髪の毛、黒い軍服、黒い帽子を被った少年が言う。この暗闇の中では自身を確認することも困難だった。

「たしかにこっちのほうだと思ったんだけどな、間違えたか」

 遠くから歩いてきたアデルは一つの方角だけを目指してきた。それは大量なまでの炎のエレメントの感じだった。もの凄く大量でオゾマシイ程の力は人に恐怖を植え込む。

「気のせいじゃないな、やっぱり此処だ」

 真っ暗な空間でアデルは立ち止まった、そしてあたりを見渡す。当然のことながら真っ暗で何も見えなかった。

「……仕方ないな」

 アデルはそういうと腰にぶら下がっている剣を取り出す。グルブエルスと名づけられた右手に構える何時もの剣だった。それを逆手に持ち替えて自分の正面に持ってくる。少し間をおいてから握っていたグルブエルスを放した、地面に突き刺さると同時にあたり一面に光が放たれる。

「逆光剣」

 パァッと光が伸びると目の前に何かがぼんやりと姿を現した。

「奇怪な術じゃな若造、無理やりワシの姿を見ようとはの」
「悪いな爺さん、俺は生憎法術が苦手でね。何かしらの方法で姿を消してたと思うんだが強制的にそれを排除させてもらったよ」

 目の前に現れたのは白髪の老人だった、赤いローブを肩から足まで伸びる長さだろう。胡坐をかいて座っていた。

「カルナックめ……こんな若造をよこして一体どうするつもりじゃ」