「本来インストールを習得するには様々な能力が必要となります、初めにエーテルの制御と操作。一時的ではありますがエーテルを体内で暴走させるのです、暴走した後正常に戻すための術を身につけておく必要があります。ですがアデル、君にその能力はありません。つまり無謀なのです」
「それじゃレイヴンに勝てない! 他に方法は無いのかよおやっさん!」

 すっと立ち上がると本棚へと足を進めるカルナック、それを目で追うレイとアデル。一冊の本を手に取るとその場でページをぱらぱらとめくりはじめた。

「何もインストールを習得できないとは言っていません、方法はあります」
「方法、ですか?」

 今度はレイが口を開いた、今までの絶望的な話から一変してカルナックは笑顔で答える。

「インストーラーデバイス、体内で暴走させたエーテルの制御を行う装置です。簡単には作れませんが」
「教えてくれおやっさん! どうすればそれを手に入れられるんだ!」

 本を閉じると再び椅子に座る、両手を組んで背もたれに寄りかかって天井を見上げた。

「素材は既に用意してあります、ただ」
「引っ張らないでくれおやっさん、後は作るだけじゃないのか?」

 一つため息をついてからメガネを外して机に置く、一度目を閉じて深呼吸をするとアデルを睨み付けた。

「生きるか死ぬかの選択です。アデル、あなたはこの賭けに乗れますか?」

 そう言った。もちろんアデルは「当たり前だ!」と言うつもりだったが一瞬戸惑った、それもそうだろう。仮にもしも自分が命の選択を迫られたとき簡単に死ぬ覚悟は出来ている何て事言える人は早々居るはずがなかった。もちろん彼も例外ではない。

「先生」

 戸惑っているアデルより先に声をあげたのはレイだった、虚ろな表情でレイは一歩前に踏み出してアデルの肩にポンと手を置いた。アデルは相方の表情を見て少し笑った。

「僕だけがインストールを使えるようになったとして、そのレイヴンって人に勝てる確立はどの位ですか?」
「レイ君だけがインストールを使えたとしたら?」「レイ、何を言ってるんだ!?」

 肩に置かれた手に力が入っていた、ギュっと一度強くアデルの肩を握り目はカルナックを見つめていた。