「えぇ、コントロールはこの際下手でも何でも構いません。あなた方二人の能力は確かに見させて頂きました。今日の所はこれまで、ですが本日の夜に私の部屋に来なさい」

 そう言ってカルナックはまた部屋の方へと戻っていった。



 その夜、アデルとレイは二人そろってカルナックの部屋の前で出くわした。

「この時間だよね確か」
「らしいな、そろそろ頃合いかなって思ってよ。立ち話も何だしおやっさんの部屋の中に入るとするか」
「だな」

 こんこんとドアをノックするがカルナックからの返事はなかった、レイは首をかしげて数秒経ってからドアノブに手を掛けた。鍵は掛かっていなかった。

「先生、入りますよ?」

 レイがそっとドアから首を覗かせた、明かりはついていて、机の上で何かを書いているカルナックの姿があった、どうやら何か書物を書いていたらしい。
 カルナックはいったん何かに集中すると周りが見えなくなる事がある。それは今に始まった事ではない、昔から。例えるならアデルが養子としてうけ居られる前からの話らしい。

「おやっさん」

 カリカリと音を立てながら黙々と文字を書いている、アデルは背中から一刀両断とかかれたはりせんを取り出した。

「ちょっとアデル!」
「大丈夫だよ、こいつなら失神までは行かないけどこちらに気付かせる事ぐらいなら簡単に出来る」

 せーのと振りかぶって勢いよくそれをカルナックの頭目掛けて振り下ろした。スパコーンっと快調な音を立ててアデルは勢いに任せてカルナックをひっぱたいた。
 ズガンと大きな音がした瞬間カルナックは顔面をテーブルにぶつけた。

「あいたたた、誰です? 私に暴力を振るう人……って、アデル君でしたか」

 笑顔でメガネを直して笑う、頭をとんとんと叩いて少しばかり出ている鼻血を止めようとしていた。

「……さて、お二人をお呼びしたのは他でもない。インストールの事です」

 頭の後ろに回していた両手を自分の顎の所まで持っていき交差させる。そして少し上目状態で話を始めた。

「先ず、レイ君のエーテルは希少な多重属性(デュアル・コア)です。風を操り氷を発生させる。防御と補助を備えた万能型のエレメントが備わっています、貴方はまだまだ子供ですし、これから修行を積めばいくらでも強くなると思います。剣の腕もそれなりですから、良い法術剣士になれます」