「お前はどうするんだ?」
「ん、俺?」

 煙草に火を付けようとしていたアデルにガズルが質問する。少し驚いた表情をしているアデルは煙草をうっかり落としそうになった。

「正直言うとな、俺はレイに付いていこうと思う。同じ家で僅かだけど一緒に暮らしていた仲だし、何より友達で家族なんだ。だからアイツの探している物と敵にしている物の為にも一緒に行こうと思う。それが本当の仲間だからな」
「なら俺もそれに賛成だ、どうせ乗りかかった船だったしな。今更降りるつもりはない」
「あ、あたしも!」

プリムラが少し酔った口調でそれを言った、流石に酒に強いアデル以外は酔っぱらっているとみて良いだろう。プリムラは顔を真っ赤にして、ガズルは既に泥水状態に近かった。




 皆がそれぞれの事を考えながらその夜は更けていく、既にぐっすりと寝ているアデルやギズー、彼等だけではなくレイ以外に例外は居なかった。
 レイは一人すっかり暗くなってしまった森の中にいた、霊剣を腰に装着して何処に行く当てもなく……いや、目指す場所はあった。
「何年ぶりだろう」
 レイがたどり着いた場所は自分が育った村、ケルミナの村に居た。

「ここから始まった、僕の運命はこの村から始まったんだ」

 何も残っていない状態の村があった場所。レイの目の前に広がっている何もない空き地。自分が育った家、友達の家、知り合いの家。全てが跡形もなく消えている。。
 思えばあの日以来この村には一歩たりとも踏み入れていない、それはカルナックのちょっとした心がけとも言える。
 まだその当時のレイはこころが成熟しきっては居なかった、その時に再びその幼い思い出の中から記憶を引き出すのには抵抗があった。だから、レイはこの村に来る事はなかった。

「父さん、僕は今自分の人生を全うしているよ。素敵な仲間がいて、好きな人がいて。カルナック先生に会えて」

 どの位言えば気が済むのか、自分でも分からないぐらいに喋っていた。そして涙が瞳から零れる。
 霊剣を地面に突き刺した、顔は少し斜めに上を向いていた。ギュッと握り拳を作り一度深呼吸をしてもう一度村全体を見回した。

「みんな、ただいま」

 村全体を見回して霊剣を引き抜いた、そしてそれを幻聖石に戻して村に背を向けて歩いていった。



 翌日、全員が起床した頃レイは中庭にいた。