「これが神苑の瑠璃の本当の正体、どう? 納得出来た?」
「それが本当の話なら、俺達がする事は……」
「そう、本当はやってはいけない事。でもレイ君に話してはいけない事の一つでもある。いい? 決してレイ君や他の人間には話してはいけないよ?」

 ギズーはその目を丸くして愕然としてた、神苑の瑠璃の本当の正体を知った驚きと、レイや今の自分たちに襲いかかる恐怖が。

「何でそんなモノがこの世の中に……ふざけろ!」

 ギズーはすぐそばの壁を思いっ切り叩いた。そして叩いた手から血がぽたぽたとしたたり落ちて床を鮮血に染める。

「いい? これが人間なの、そしてそれはおとぎ話でもある、幻魔大戦(おとぎばなし)の真相。当時の帝国がやっとの思いで探し出したにもかかわらず最低の結果で終わったしまった」
「だからって、何万もの人間を犠牲にするまでの価値があったとも思えん。単純に考えればそんなモノ制御出来るはずがない、そんな事……許されるはずが」

 ギズーは怯えている、人間の欲望と願望のおぞましさと恐怖に。自分もその人間達の生き残りなのではないかと考えるとゾッとする。今まで自分がしてきた行為がとっさに脳裏によぎった。

「あなた達は、神苑の瑠璃を使ってはならない。だけど帝国も動き出している。だからこそあなた達は神苑の瑠璃を守らなくちゃいけない。今の帝国軍総帥の手から」
「人間は、何処まで汚いんだ」

 壁に押しつけていた手をゆっくりと下ろした、未だ滴り落ちてくる血液は止まることなく床を塗らした。一つため息をしてアリスはギズーの手を取る。

「まったく、どうしてカルナックの元に来る人間ってこんなに血の気が多いのかしら? 私の包帯がまた上手くなっちゃうじゃない」
「アリス姉」
「ふふ、でもこの事は本当に喋ってはいけないよ? この事を知ってるのは私と貴方とカルナック、そしてそれを体験したシトラさんだけ」
「シトラ? シトラってあの?」
「そう、シトラさんは実際にそれを体験している。だからこそ危険なのを承知で旅をしてるんだと思う。あなた達を守るために」

 なるほど、そんな感じの顔をしていた。確かに瑠璃の話を持ち出すと何故か暗い表情になったり途中止めようとしたりと色々な妨害をしてきたのも事実。それまでの行為が何故あったのかをアデルはようやく理解し解釈した。

「誰だ!」