「いえいえ、私も既に引退の身です。現にこうして私の剣術の後継者をとって居るぐらいですから。私もいい年になりましたからね」

 笑い声が聞こえる、その他の人間も二人の話に興味を持ちだして楽しく聞き入っていた。




「うーん、流石に少し冷えるね」
「そうだね、もう少し厚着をしてくれば良かったかな?」

 レイとメルは近くの泉に来ていた、この場所はレイのお気に入りの場所でもあり、魔物も寄り付かない場所としてゆっくりとのびが出来る場所の一つでもある。

「うん、少し寒いかな。っあ!」
「え?」
「えへへ、良い事思いついちゃった。それ!」
「え、何? うわぁ!」

 メルはレイに飛びついた、やっぱり酔っぱらっているせいか理性は少しとんでいるらしい。普段のメルならこんな事しないはずだ。そうレイは自分に言い聞かせた。

「えへへ、レイ君暖かい」
「ちょっとメル!?」
「何? 私じゃ駄目なの?」
「駄目とかそうじゃなて、誰かに見られたら」
「誰も来ないよ、そのためにこんな場所まで来たんだから」
「あれぇ? レイ君、何だかドキドキいってるよ?」
「ききき、気のせいじゃないかな? あはははは!」
「あはは、はははははは……はは………………うぅ、うあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 さっきまで笑っていたメルが突然泣き出した、レイは何故メルが泣いているのかを知っていた。それはメルの命が後どれくらい持つのかだった。
 そっとメルを抱きしめる、腕の中で自分の名前を呼んでくれる女の子を優しく。メルはレイのジャンパーを鷲掴みにして泣いていた。

「嫌だよ! やっと好きな人が出来たのに、やっと自分に素直になれると思ったのに!」
「……」

 とてもやるせない感情がレイの中に残った、とても痛々しくて、とても悲しくて、とても捨てきれないこの感情。何処にぶつけられるモノでもないのに。

「怖いよ! 私、自分が怖いんだ。こうしてレイ君と一緒にいる事が幸せに感じられて、なのにこんなの私じゃないのに……とても悲しくて……私……なんなんだよぉ」
「メル、大丈夫。お医者さんがくれた薬をちゃんと飲んでれば大丈夫だって言ってたじゃないか。きっと治る」

 メルはそっと顔を上げた、涙でグチャグチャの顔だったけどレイはその顔がとても可愛いと思った。そして二人は以前にもした時と同じように、お互いの唇を重ねた。




「なっ!」