瞬間にして打ち出された灼熱の弾丸は迷い無くガズルの心臓の元へと飛んでいく。だがその弾丸はガズルの重力によって地面に叩き付けられた。

「”カルス参式”行かせて貰う!」

 そう叫ぶとガズルは弾切れを起こした拳銃を放り投げたギズーの元へと全力で走っていった。だがギズーもすぐにその状況下の中何をすれば一番効率が良いのかを知っていた。

「足下注意だぜ!」
「うわぁ!」

 足払いだ、瞬時にしてしゃがみ込み低空で回し蹴りを放つ。地面すれすれのその足は見事ガズルの片足を捕らえた。

「……なんちゃってな!」
「あ?」

 地面に顔が激突するかと思った瞬間にガズルはその体制を直した、右手を地面につけ体をひねる。そのままの勢いでギズーにかかと落としを決める。それも、もの凄く無理な体勢で。

「壱式、パワー・ヴァインド!」

 後頭部に踵を入れられたギズーはなすすべ無く地面に叩き付けられた、その反動で少しながら宙に浮いた。

「弐式、天崩閣(てんほうかく)!」

 地面に足をつけたガズルは直ぐさま右足を後ろに振り上げた。その振り上げた反動で少しながら浮いているギズーの身体をもっと浮かせるために蹴り上げた。

「とどめの!」

 ほとんどムーンサルト状態で放った弐式の体制を直し、広くスタンスをとって地面に落ちてくるギズー目がけて右腕を振りかぶる。

「参式、パイルバンカー!」

 振りかぶった右腕をまっすぐにギズーの背中へと一発の打撃を叩きこんだ。


 ギズーが目を覚ましたのは既に夕刻だった、何時か見た部屋のベッドの上で寝ていたらしい。

「ててて、ガズルの奴……あんな奥の手を持ってたなんて聞いてねぇって」
「奥の手だから誰にも見せない、それが普通じゃないの?」

 薄暗い部屋の奥から女性の声が聞こえた、まだその暗さに目が慣れていないせいか女性の顔を確認する事は出来なかった。

「誰だあんた」
「あら、私を忘れるなんて酷いじゃない。アリスよ」
「なんだ、アリス姉か」

 カルナックの家に住む女性。澄と追った目でギズーを遠くの椅子に腰掛けてみていた。

「久しぶりねギズ君?」
「相変わらず俺の名前省略してるな」
「あら、いけなかったかしら?」
「……いや、むしろそっちの方が懐かしい」
「ふふふ」