だがそこは我慢だと自分に言い聞かせ後少しの道のりを歩き始めた、他のメンバーもそれに続いて残りの道のりを歩く。後一時間もすればカルナックの家に到着する距離まで来ていたレイ率いるFOS軍は東大陸から無事中央大陸に渡り、帝国との衝突もなくレイとアデルの師匠であるカルナックの家に到着する事が出来る。
 後一時間の道のりの中で面倒ごとがなければの話だが……。

「ごめんねレイ君、私の荷物まで持ってもらって。もう大丈夫だから私が持つよ」
「だめ、それでなくてもメルは一週間前まで瀕死の状態だったんだよ? 病み上がりの身体にはちょっとこの荷物は重たすぎるよ」
「え、でも」

 最後尾の方で息を切らしながらレイの隣を歩いているメルがつい最近まで自分と同じ状況下で死の境を彷徨った少年の身体を心配していた。それでなくても今さっき、少年は疲れたと言って休憩を取ったばかりである。本当は無理をしているのではないかとメルは思った。

「だって、レイ君も私と同じなのよ?」
「大丈夫、メルは女の子なんだからこんな重い荷物は俺達男に任せておけば良いんだよ」
「でも……きゃ!」

 レイの顔を見ながら歩いていたメルは自分の足下にあった石に気付く事が出来ずつまずいた、そして転んだ。

「ほら、ちゃんと前を見ないと駄目じゃないか。膝から血が出てるよ?」
「いったぁぁ」

 痛そうに涙目になるメルを見てガズルが近づいてきた、そしてポケットからハンカチを取り出すとそれをメルの膝に巻き付けた。

「これで少しは大丈夫だ、レイ、その荷物俺よこしな」
「え、よこせって言われても」
「良いからよこせ、その代わりお前はメルを背負ってやれよ。それに周りの空気ぐらい読め?」
「周りの空気?」

 レイはみんなの顔色をうかがった、アデルとギズーはニヤニヤしていてプリムラとシトラは楽しそうに笑っている。そしてガズルも満面の笑みで荷物を取る。

「わかったか? 今の状況が」
「皆して楽しんでる、あ! そこ! 変なひそひそ話をしない!」