よく晴れた冬の昼間、ここはカルナック家の敷地内。いつもの通りアリスがカルナックの世話を焼いていた。カルナックの部屋が何時も綺麗なのはアリスが毎日掃除をしているからである。一日でもほったらかしにしておけば部屋中ゴミだらけでとても人間が住めるような部屋ではなくなってしまう。
 理由としては、何時もカルナックが書いている何らかのノートの破り捨てた紙切れ。インクで書いている為に失敗したら消せる物ではなかった、そして何時しかミスをしたノートのページは破り捨てている。

「今日はずん分と少ないわね」

 アリスが掃除をしているときふと思った、いつもより綺麗な部屋だからである。いつもなら歩くのもやっとといった感じにまで散らかっている物だ。
 それが今日に限って書類はきちんと整頓されていてノートの切れ端がそこら中に散乱しているのに。今日に限っては普通の部屋と同じぐらい綺麗だった。

「カルナック、何処にいるの?」
「外庭だよ、何か困った事でもあったのかい?」

 穏やかな声が聞こえた、声の大きさからそれ程遠くではないと思える。近い位置に確かにカルナックはいた。そしてアリスは疑問に思った事を口にする。

「今日はずいぶんと片づいているじゃない? これならすぐに終わるわ」
「たまには私だって綺麗にしますよ」

 近くにいるにもかかわらずかなり大きな声が聞こえた、言葉の中に所々薪が割れるような音が混じっていた。おそらく今外で薪を割っているのであろう。いつもなら夕刻時にやる仕事を何故今やっているのだろうか。アリスは疑問に思った。

「何でこんな時間から薪割りなんてしているの? まだお昼を回ったばかりよ?」
「おやおや、アリスには言っていませんでしたか。私のテーブルの上にある手紙を読んでみて下さい、理由が分かりますよ?」
「手紙?」

 部屋を掃いていたアリスは手に持っているほうきを本棚に掛けると言われたとおりテーブルの上に置いてある手紙を探した。本と本の間に挟まっていた手紙は相変わらずきちんと三つ折りにされていて封筒に入っていた。
 こういった変な所だけには几帳面なカルナックだ、そのカタチを崩さないようにゆっくりと本をどかして封筒から手紙を抜き出した。

「あら、久々に帰ってくるのねあの子達」