「お前達、あの瑠璃の本当の恐ろしさを理解していない! アレは……あの宝石はこの星に厄災をもたらす存在だ! そもそもあの石は神々が所有する神器、それを人間如きが使おうなんて!」
「ならば破壊すれば良いのですね?」

 ずっと黙り込んでいたカルナックが突然口を開いた。

「カルナックさん、何を……」
「本当は、私はあの宝石にまつわる古代説を知っていましてね。貴方も知っていたのかと思っていましたがまさか本当に知っていようとは思っても居ませんでした」
「では、カルナックさんは始めから」
「えぇ、本当はあの石を封印又は破壊しようと考えていました。あの石さえなければ“アレ”も蘇る事はないでしょう」

 聞いた事のない名前が飛び出してきた、シトラは勿論フィリップも首をかしげる。だがこの男だけは違った、出された名前に異常なまでの反応を示した。

「それならば、“幻魔樹”を探し出し燃やすほうが安全です! 瑠璃と幻魔樹、そして***のいずれかがそろっていなければ“アレ”は復活しません、ですから幻魔樹を!」
「分かっていないのは貴方の方です」

 突然フィリップが口を開いた、何かを悟った様子でレイヴンを見る。

「ようやく話の筋が分かりましたよ、確かに瑠璃には“アレ”を復活さえるには十分かと思います。ですが幻魔樹を燃やすのであればこの星は朽ち果てる事になります」
「何だと」
「宜しいですかな? 元々幻魔樹というのは“アレ”を復活させるだけの物ではありません。その昔、“アレ”の復活を恐れた人類は力の源である幻魔樹そのものを消滅させる事を選んだ。だが一部の学者は猛反対した。それは幻魔樹がこの星のエレメントの源だという仮説からだ。勿論、仮説としてその時は無視されたがね。しかし、その発言を無視した他の学者達は当時の帝国に情報を流し幻魔樹と思われる大樹を焼き払った。その大樹は幻魔樹ではなかったようだが、森の守り神の怒りに触れてしまい、人間と魔族との大戦争へと繋がっている。実在するかもわからない幻魔樹を探すよりは瑠璃がはるかに効率的だ」

 驚く真実がフィリップの口から話された、勿論カルナックはそれを知っていた。だからこそカルナックは幻魔樹ではなく瑠璃の方を封印しようと考えたのだろう。その言葉にレイヴンは自らの無知さに暴落した。