「なりません! 神苑の瑠璃を探しに出て帰ってきた者は一人も居ないのですから、第一残された私達はどうするのですか! そもそもシトラの事を考えれば瑠璃を探しに行くなんて事はお止めになって下さい! あの瑠璃の所為でシトラは心に深い傷を作ってしまったのですよ!?」

 もの凄い形相でレイヴンと呼ばれた青年はカルナックに怒鳴った、少々耳が痛いのか両耳を塞いで顔をすくめた。隣にはシトラと呼ばれた女性が座っている。シトラの対象の席には少し控えめな青年が座っている。

「それは分かっております、ですからあなた方にはもしもの為に私の悟りをお教えしたのではないですか。いつか後継者が現れたその時、あなた達は私の悟りを継承する義務があります。もう私はこれ以上発展のない人生を歩む事になりかねません。そして、私もいずれは死んでしまいます、少なくともあなた達よりもずっと早くに――」
「あの!」

 カルナックが喋っている途中シトラが突然話を切り出した、いつもなら大人しい性格のシトラから見れば突然すぎて驚く物だ。

「私も、私も連れて行って下さい」
「何を言ってるんだシトラ! 又あの地獄みたいな場所に戻りたいというのか!?」

 レイヴンが叫んだ、その言葉にシトラはすくみ方を小さくして俯いた。

「でも、私は……私は本当の事を知りたいんです。テトが最後に言い残した言葉の本当の意味を、未だに分からない謎かけは私を苦しめるんです。だから」

「本気なのですか?」

 言い争うシトラとレイヴンの間に割って入ったこの青年、“フィリップ・ケルヴィン”は両手を顎の下に据えて話した。

「そのつもり。だから、カルナック先生、私も連れて行って下さい! 覚悟は出来ています」
「……」

 カルナックは黙った、先ほどまでの威勢は何処に行ったのだろうと考えるほどだ。だが暫くしてからフィリップが口を開く。

「私も行きましょう、私は師匠にお仕えする為に自分の家元を捨ててここまで来たのです。今更力など欲しようとは思っていません」
「ケルヴィン様」

 重い腰を上げてゆっくりと立ち上がったフィリップにシトラが涙目で言う。
 しかし、レイヴンは納得いかなかった。