そう言いながらグリップに右手を乗せたままのギズーが睨む、同時のその後ろに座っているファリックもまた同じようにコルトパイソンを握る。

「結構、では今の君達についてだ」

 正面のコルクボードに彼等七人分の手配書を張り出して現状について説明を始める。レイ達は初めて自分達の手配書をこの時目撃することになった。

「帝国は君達全員に懸賞金を懸けた、主に西大陸全土にだ。それぞれ額は違うが生死は問わないと聞いている。本来であれば君達がリトル・グリーンに到着した時点で住民が君達の首を狙っていただろう。が、現状私達が今それを抑え込んでいる」
「ギズーの懸賞金が上がってるな、細かいこった」

 ギズーは以前より全国に指名手配されているのはレイ達は知っている。アデルは一年ほど前に見た手配書の金額を覚えていて現状の金額と照らし合わせて小さくぼやいた。

「そうだ、君達の金額はそんじょそこらの賞金首とは訳が違う。一人一人が尋常ではない金額が設定されており全員分を合わせれば豪邸付きで街を買う事も可能だ。帝国がそれを支払うかどうかはまた別だがね」

 彼ら全員の金額を足すとちょっとした国家予算にも迫る勢いであった。彼等は現状自分達が置かれているこの事に少しだけため息を付いた。

「コレだけの金額が提示されているのであれば確かに街を上げて僕達を捕えようとする事も頷けます、事実そうした方が西大陸での戦果は広がらずに済むのではないですか?」
「先にも述べた通り、この金額を支払えるだけの力が現状帝国にあるかどうかは怪しい所だ。我々でもこの金額には最初目がくらんだ。が、現実的に考えてあり得ない数字であることも理解できた。なんせ我々がこの先十年活動できる金額を簡単に超えているからな」

 目をつむって左右に首を振るガイ、一息ついてから窓の外へと視線を泳がす。

「外を見たまえ、技術だけが膨れ上がったこの街を、人の夢の跡だよ。人では足りないが雇う金なんぞ帝国との戦争でこれっぽっちも残っていない。技術屋たちは寝る暇も惜しんで新たな技術を、新たな革新を躍起になっているこの街を。金さえあれば技術の進歩何て今の数十倍にも短縮されるであろう事、それを分からない我々ではない。だからこそこれは投資だ」

 もう一度彼等に視線を戻し話を続ける。

「君達を帝国に差し出すなんて訳ない、この大陸では我々の情報網を駆使すれば君達の様な子供を追い込むことはいとも簡単だ。だが目先の儲けに眩むようでは光が見えたとは言えない。ここからは少々本音を交えた話をしよう」

 懐から煙草を取り出して口にくわえる、着火剤が見当たらずポケットと言うポケットを弄るが見つからない。それを察したアデルは毎度のごとく右手で指を鳴らすと摩擦熱を利用して小さな火を作り出し、ガイが咥えている煙草の先端へと放り投げた。

「器用なもんだな、では続けよう。我々は中央と東大陸へと深く根を張る事を考えている。独占的な商法ではなく現地住民たちとの円滑な取引をする為だ。経済が回ればそれだけ活気と金が動く。金が動けば我々が抱えている研究や技術の更なる飛躍へと繋がる。その為に帝国が邪魔でしかない」
「それで僕達を帝国にぶつけ、あわよくば現皇帝を失脚させる――」
「そうだ、言うなればこれは革命なのだ。君達がどのような理由で帝国と戦っているかなど正直興味はない、それどころか我々の利益に繋がるのであれば誰がどれだけ死のうが知った事ではない。しかし君達が現状を打破するのであれば我々は投資を惜しまない」