船上から見たリトル・グリーンは彼等の目を奪うのに一分と時間は掛からなかった。
噂には聞いていたがこれ程とは彼等の誰一人として予想はしていなかっただろう、高い建造物に見慣れない配管が所狭しと設置され、隙間からは蒸気が漏れ出している。
中央大陸では見なかったものがそこら中にあって彼等の好奇心を煽る。特にガズルは噂と本でしか見た事の無い情報故に心が躍った。同じくレイもまた初めて見る光景にときめきを隠せなかった。
「言った通り凄いだろレイ」
「うん、予想以上だったよ」
二人は船から降りると周囲を見渡した。
年相応の反応と言えばそうなのだろう、それとは対極的なアデルとギズーは目の前で浮かれている二人にため息を付いた。
「なぁ撃っていいか?」
「着いて早々騒ぎになるからやめとけギズー、だけど気持ちは分かる」
ホルスターからシフトパーソルを引き抜こうとするギズーをアデルがゆっくりと宥める。普段この役目はレイが担う所だが当の本人は二人の目の前で見た事の無い景色に心を奪われていた。
「蒸気機関ってすごいね姉さん」
「そうだね。やっぱりミラもファリックもこういうの好きなの?」
「オイラはそこまで……でもミラは好きかも」
最後に下りてきた三人もそれぞれの感想を述べる、ファリックはそれ程でも無い様に見えるが実はこの光景に多少なり心がざわついてる様子だった。ミラは言うまでもない。
西大陸の玄関口にして人口密度第三位の街であるこのリトル・グリーン、西大陸の北東部に位置するジグレッド程ではないがその活気の高さは中央大陸では中々見られない物だった。各所で露店が立ち飲食物を初め見た事の無い金属片迄売り物は多岐にわたる。
又、住人の熱気もさることながら街中に敷き詰められた配管から漏れ出す水蒸気から発せられる湿度も相まって町全体の温度が高く感じられる。
「噂通りの暑さだな、稲の収穫期が終わった筈なのにこれじゃぁもうしばらくレイが活躍しそうだ」
帽子を脱いで仰ぐアデルが静かに呟いた。隣でゆっくりとホルスターにシフトパーソルをしまうギズーもそれに同意して頷く。
「さてっと、先ずはどこに行くんだ?」
「――テメェは人の話を聞いてねぇのか覚えてねぇのかどっちだ、海上商業組合の西支部だつってんだろ」
「あぁソレだそれ、んじゃぁ行くとするか。おい、馬鹿二人!」
ギズーの悪態にも動じることなく相変わらず目の前ではしゃぐ二人の首根っこを掴んで引きずるように歩き始めた。それを後ろから見ていたギズーは閉まったシフトパーソルをもう一度抜こうとして、やっぱり止めた。
「騒ぎを起こしても面白くねぇ……か、間違いねぇ」
両腕を組んでアデルの後を追う。その様子を更に後ろで見ていたミト達三人は苦笑いして静かに後を追う。
西大陸――。
世界の中心が中央大陸と言われるようになってから久しいが、千年も昔であればこの西大陸こそが世界の中心と言われていた。工業技術と蒸気技術の発達によって中央と東大陸に比べ先に進んでいる。帝国が蒸気機関車を奪ってからと言う物その技術分野情報をひた隠しにするようになった。
元々は森林が多く緑豊かな大陸ではあったが、技術の発展と共にそれらも徐々に失われて行くようになり、今では千年前と比べると森林は十数パーセントほどしか残っていない。その大多数は北部に及ぶ。
噂には聞いていたがこれ程とは彼等の誰一人として予想はしていなかっただろう、高い建造物に見慣れない配管が所狭しと設置され、隙間からは蒸気が漏れ出している。
中央大陸では見なかったものがそこら中にあって彼等の好奇心を煽る。特にガズルは噂と本でしか見た事の無い情報故に心が躍った。同じくレイもまた初めて見る光景にときめきを隠せなかった。
「言った通り凄いだろレイ」
「うん、予想以上だったよ」
二人は船から降りると周囲を見渡した。
年相応の反応と言えばそうなのだろう、それとは対極的なアデルとギズーは目の前で浮かれている二人にため息を付いた。
「なぁ撃っていいか?」
「着いて早々騒ぎになるからやめとけギズー、だけど気持ちは分かる」
ホルスターからシフトパーソルを引き抜こうとするギズーをアデルがゆっくりと宥める。普段この役目はレイが担う所だが当の本人は二人の目の前で見た事の無い景色に心を奪われていた。
「蒸気機関ってすごいね姉さん」
「そうだね。やっぱりミラもファリックもこういうの好きなの?」
「オイラはそこまで……でもミラは好きかも」
最後に下りてきた三人もそれぞれの感想を述べる、ファリックはそれ程でも無い様に見えるが実はこの光景に多少なり心がざわついてる様子だった。ミラは言うまでもない。
西大陸の玄関口にして人口密度第三位の街であるこのリトル・グリーン、西大陸の北東部に位置するジグレッド程ではないがその活気の高さは中央大陸では中々見られない物だった。各所で露店が立ち飲食物を初め見た事の無い金属片迄売り物は多岐にわたる。
又、住人の熱気もさることながら街中に敷き詰められた配管から漏れ出す水蒸気から発せられる湿度も相まって町全体の温度が高く感じられる。
「噂通りの暑さだな、稲の収穫期が終わった筈なのにこれじゃぁもうしばらくレイが活躍しそうだ」
帽子を脱いで仰ぐアデルが静かに呟いた。隣でゆっくりとホルスターにシフトパーソルをしまうギズーもそれに同意して頷く。
「さてっと、先ずはどこに行くんだ?」
「――テメェは人の話を聞いてねぇのか覚えてねぇのかどっちだ、海上商業組合の西支部だつってんだろ」
「あぁソレだそれ、んじゃぁ行くとするか。おい、馬鹿二人!」
ギズーの悪態にも動じることなく相変わらず目の前ではしゃぐ二人の首根っこを掴んで引きずるように歩き始めた。それを後ろから見ていたギズーは閉まったシフトパーソルをもう一度抜こうとして、やっぱり止めた。
「騒ぎを起こしても面白くねぇ……か、間違いねぇ」
両腕を組んでアデルの後を追う。その様子を更に後ろで見ていたミト達三人は苦笑いして静かに後を追う。
西大陸――。
世界の中心が中央大陸と言われるようになってから久しいが、千年も昔であればこの西大陸こそが世界の中心と言われていた。工業技術と蒸気技術の発達によって中央と東大陸に比べ先に進んでいる。帝国が蒸気機関車を奪ってからと言う物その技術分野情報をひた隠しにするようになった。
元々は森林が多く緑豊かな大陸ではあったが、技術の発展と共にそれらも徐々に失われて行くようになり、今では千年前と比べると森林は十数パーセントほどしか残っていない。その大多数は北部に及ぶ。