今から約十五年も前の話、この世界に何でも一つだけ願い事を叶えてくれるという宝石、瑠璃が存在するという噂が流れた。その瑠璃は“ 神苑(しんえん)瑠璃(るり)”と呼ばれる。世界中の旅人や一攫千金を狙う者は皆瑠璃を探し、そして誰も帰っては来なかった。
 人間の欲望、そして力を欲するあまり仲間を裏切り殺し合い、そして全滅していった。その中で唯一生き残ったパーティーがあった。平均年齢十五歳の男女が集まった出来たてのチームでもある、その中の一人――シトラ・マイエンタという女性が生き残った。
 他の仲間は皆殺し合い、そして最後に残ったシトラ・マイエンタの恋人、“テト・ラピストマル”はシトラを殺そうとした仲間と相打ちになり息を引き取った。残されたシトラは呪われた瑠璃を探すのを止め、恋人の墓をその地に作り去った。
 その後も瑠璃を探す冒険家達は一行に減る気配を見せず逆に増える一方だった、そして誰も瑠璃は見つけられなかった。
 次第に神苑の瑠璃は“過ちの瑠璃”と呼ばれるようになり、人々に恐れられた。だが、その瑠璃の詳細な記録は既に無く、残されているのは過ちの瑠璃と名前だけになってしまった。
 しかし、ここに一人。その過ちの瑠璃を探そうとする者が居た。彼の名は“カルナック・コンチェルト”、何故彼は瑠璃を探そうとしたのか、それはこの星が見た記憶の本当の意味を知る為である。
 彼は剣聖であり、賢者でもあった。この世界中で今、彼に敵う者なんて居ない。よって彼は力を得ようとはしなかった。

「無茶です、あの瑠璃の噂はカルナックさんも聞いているはずです!」

 真っ赤に染まった髪の毛、スラリとした身長、腰には刀をぶら下げている青年がカルナックに叫んだ。だが当の本人は涼しい顔でお茶をすすっている。

「大丈夫ですよレイヴン、私は力なんて手に入れようとは思っていませんから。ただこの星が見た本当の歴史を知りたいだけなんですから」