たったの十四、五の少年少女達だ。そんな彼らが一週間留守にしただけでこの惨状が起きるとは誰も予想できなかった。それは作戦司令のレナードもまた同じだ。ここに生き残りがいればきっと「気に病むことは無い」と言葉をかけてくれるだろう。
「っ!」
瓦礫の中で微かだが動きを感じたレイ、即座にそこへと駆け寄り木材や瓦礫を退かしていく。そして――。
「――レナードさん」
変わり果てたレナードの姿がそこにあった。四肢の欠落はないものの左腕は本来曲がらない方向へと捻られていて右足もまた、同じように。
「あぁ剣聖、遅かったじゃないか……」
「ごめんなさい、遅くなっちゃいました」
朦朧とする意識の中、最後の力を振り絞っているのだとレイは感じた。伝えなければいけないことがある。それを伝える前に逝くことは許さない。と、弱っているレナードの瞳から感じ取れた。しゃがみ込みレナードの無事な手を握ると、左手で近くにあったシフトパーソルを拾い上げて空へとむけて発射した。
「気に病むことはねぇよ、まだ子供のお前さん方を俺ら大人の戦争に巻き込んじまったのは俺達――ダメな大人なんだ」
「何言ってるんですか、ロクに剣もシフトパーソルも扱えなかったおじさんが……何があったんですか」
目線を落とすと胸ポケットに収まっているタバコが目に入った。一本取り出してポシェットから着火剤を取り出して火をつける。先端に火が付いたことを確認したのちレナードの口元へと運んだ。
「あぁ、うめぇなぁ――気をつけろよ剣聖。ありゃぁ……化け物だ」
「やっぱり居たんですね、フレデリカ・バークが」
「フレデリカ・バークは強いぞ、骨の髄まで染み込んだぜ……恐怖をな」
正直フレデリカ・バークが前線に出てくることさえ予想していなかった。言わば帝国の最終兵器、フレデリカが落ちれば帝国の勝利はない。故にカルナックとの対決を控えているであろうフレデリカを前線に出してくることは無い。そう彼らの中で結論付けていた。
同時にカルナック家で伝えられた話も相まってのことだった。だが現実は違っていた。
きっと軽い準備運動のような物だったのだろう。フレデリカにとってこの破壊活動は本命との対決、カルナックとの決着をつけるための準備運動。そう考えるとより一層絶望が押し寄せてくる。そうレイは感じ取っていた。
「でも安心しろよ、お前さん達の仲間は全員逃がした。今頃は西大陸へと渡ってる頃だろ……なぁ剣聖」
「はい」
レナードが咥えているタバコの火が徐々に弱まっている。吸い込む力もほとんど残ってはいないのだろう。それを目の当たりにしたレイの瞳に涙が浮かぶ。
「泣くんじゃねぇよ、男の子だろ。生き残れよ、こんなクソッタレな時代だからこそ……」
「はいっ!」
握りしめていたレナードの手に一瞬力が入って、笑顔を作って見せた。そして。
「あぁ――最後の一服ってのも、乙なモンだな……なぁ……剣聖――」
そこで事切れた。
笑顔のまま旅立ったレナードの亡骸を見つめるレイ、そこにシフトパーソルの発砲音を聞きつけた他のメンバーが集まってくる。同時に目の当たりにしたレイとレナードの姿を見て一同が絶句した。
「逝ったのか?」
「うん」
レナードの胸ポケットから煙草を取り出して一本口に咥えるレイ。声を掛けたアデルはその仕草に驚いていた。決してタバコを吸おうとは思っていなかったレイがレナードの遺品であるソレを咥えたのだ。
「っ!」
瓦礫の中で微かだが動きを感じたレイ、即座にそこへと駆け寄り木材や瓦礫を退かしていく。そして――。
「――レナードさん」
変わり果てたレナードの姿がそこにあった。四肢の欠落はないものの左腕は本来曲がらない方向へと捻られていて右足もまた、同じように。
「あぁ剣聖、遅かったじゃないか……」
「ごめんなさい、遅くなっちゃいました」
朦朧とする意識の中、最後の力を振り絞っているのだとレイは感じた。伝えなければいけないことがある。それを伝える前に逝くことは許さない。と、弱っているレナードの瞳から感じ取れた。しゃがみ込みレナードの無事な手を握ると、左手で近くにあったシフトパーソルを拾い上げて空へとむけて発射した。
「気に病むことはねぇよ、まだ子供のお前さん方を俺ら大人の戦争に巻き込んじまったのは俺達――ダメな大人なんだ」
「何言ってるんですか、ロクに剣もシフトパーソルも扱えなかったおじさんが……何があったんですか」
目線を落とすと胸ポケットに収まっているタバコが目に入った。一本取り出してポシェットから着火剤を取り出して火をつける。先端に火が付いたことを確認したのちレナードの口元へと運んだ。
「あぁ、うめぇなぁ――気をつけろよ剣聖。ありゃぁ……化け物だ」
「やっぱり居たんですね、フレデリカ・バークが」
「フレデリカ・バークは強いぞ、骨の髄まで染み込んだぜ……恐怖をな」
正直フレデリカ・バークが前線に出てくることさえ予想していなかった。言わば帝国の最終兵器、フレデリカが落ちれば帝国の勝利はない。故にカルナックとの対決を控えているであろうフレデリカを前線に出してくることは無い。そう彼らの中で結論付けていた。
同時にカルナック家で伝えられた話も相まってのことだった。だが現実は違っていた。
きっと軽い準備運動のような物だったのだろう。フレデリカにとってこの破壊活動は本命との対決、カルナックとの決着をつけるための準備運動。そう考えるとより一層絶望が押し寄せてくる。そうレイは感じ取っていた。
「でも安心しろよ、お前さん達の仲間は全員逃がした。今頃は西大陸へと渡ってる頃だろ……なぁ剣聖」
「はい」
レナードが咥えているタバコの火が徐々に弱まっている。吸い込む力もほとんど残ってはいないのだろう。それを目の当たりにしたレイの瞳に涙が浮かぶ。
「泣くんじゃねぇよ、男の子だろ。生き残れよ、こんなクソッタレな時代だからこそ……」
「はいっ!」
握りしめていたレナードの手に一瞬力が入って、笑顔を作って見せた。そして。
「あぁ――最後の一服ってのも、乙なモンだな……なぁ……剣聖――」
そこで事切れた。
笑顔のまま旅立ったレナードの亡骸を見つめるレイ、そこにシフトパーソルの発砲音を聞きつけた他のメンバーが集まってくる。同時に目の当たりにしたレイとレナードの姿を見て一同が絶句した。
「逝ったのか?」
「うん」
レナードの胸ポケットから煙草を取り出して一本口に咥えるレイ。声を掛けたアデルはその仕草に驚いていた。決してタバコを吸おうとは思っていなかったレイがレナードの遺品であるソレを咥えたのだ。