「ミラの言う通りだアデル、仮に向こうに高位な法術使いが居たら俺やファリックはそれを防ぐ術がない。法術に対する防御はレイに任せっきりになっちまうから出来る限りの消耗は控えたい。こういう時にエーテルが無いってのはつれぇな」

 肩の怪我がほぼ治癒された所で右腕の調子を確かめるために二度三度回してギズーが言った。それもそうかとアデルは納得してその場に寝そべる。

「この際だから俺らの立ち位置をもう一度明白にしておこう。前衛のアタッカーは俺とアデル、中衛に防御のレイと中距離射撃のファリック、そして回復と中距離攻撃が可能なミト。最後に後衛から大火力をたたき出せるミラと長距離射撃のギズー。こんな振り分けになるだろう。正直レイは前衛でも問題は無いが言わば俺達の要、防御が崩れた所に法術やショットパーソルの弾丸の嵐はゾッとするな」

 木の枝を使って地面に図を書きながら説明するのはガズル、それを囲みながら見つめる他のメンバー。

「確かにレイが落ちたら崩れるのは早いだろうな。そう言う意味でいえばガズル、お前も出来れば落ちて欲しくは無いから前衛としては辛い所だな」
「なんでだ?」
「お前の重力球って法術を吸収できるだろ? そう言う意味での防御はギズー達からすれば有り難いんじゃないかって」
「馬鹿言うな、アレは一種類の物しか吸収できねぇんだよ。炎なら炎、風なら風って具合でしかできねぇ。だからレイ程の防御力は無いんだ」

 呆れ顔でガズルはアデルにそう言った。

「とまぁこんな感じかな、後は――」

 吸い殻を焚火に投げ入れたガズルはギズーへと目線をやる。それに気づいたギズーは左手で右肩を抑えた。

「そろそろ教えてくれねぇか、お前は一体誰と会って誰にその肩を撃たれた? 何で引き金を直ぐに引かなかった?」
「……」
「だんまり決め込んでても話は進まねぇぞギズー、教えろよお前がそこまで怯える野郎の名前を。完全なる偽善者(オール・フェイカー)って一体誰だ?」

 一度ガズルから目線を外して右肩を抑える左手に力が入った。だが何かを観念したかのようにその力を緩めると懐から煙草を一本取りだして火をつけた。そして。

完全なる偽善者(オール・フェイカー)――俺の兄貴「マイク・ガンガゾン」。一族最強の男」