「大丈夫かギズー!」
「――あぁ、肩を撃ち抜かれただけだ。問題はねぇよ」
「何で撃たなかったんだ、相手は誰なんだよ」
「大丈夫だ、心配いらねぇ。ただの顔見知り(・・・・)だ。まさか帝国に居るとは思っても居なかったから面を食らっただけだよレイ。問題はねぇ」
「でもお前――」
「大丈夫だって言ってんだろう!」

 レイは初めてみたのかも知れない、ここまで何かに怯えるギズーの姿を。
 ギズーもまた人の子だ、何かに恐怖を覚え何かに恐れる事もあるだろう。だがそれは一般人(・・・)の場合に限る。少なくともレイを含めたここにいる少年少女達は世間でいう一般ではない。
 死線を潜り抜けてきた幼いながらも前線で戦ってきた者達だ。ましてやレイ、アデル、ガズル、ギズーは先の神苑の瑠璃の戦いを抜けて来た。そんな彼等が今怯える者と言えば――レイは想像が付かなかった。

「今更何の用だよ、完全なる偽善者(オール・フェイカー)……」




 帝国の待ち伏せを受けてから二時間、ギズーの負傷により一時休憩を取った彼等の脳裏には不安が残っていた。この先帝国の待ち伏せがまだあるかも知れない、その都度こうして足止めをされていては全力で走ってきた意味が無い。ましてやギズーが負傷するこの事態は誰も予想だにしていなかった。

 だがギズー自身に油断が無かった訳ではない。
 帝国の一般兵程度ならある程度苦戦することも無く突破できる、それは今まで培ってきた彼等の戦闘と修羅場を切り抜けてきたからこそ分かる力量。そして仲間と一緒に居ると言う何よりの安心感がギズーだけではなく、全員の心の奥底にあった。