「――腕を上げたなギズー」
「何で……何でこんな所にアンタ(・・・)が居るんだ――」

 おびえた様子だった。
 何に怯えているのか彼等の位置からはまるで分からなかった。いつでも引き金を引いてとどめを刺せるだろうその姿に一同は何事かと困惑していた。

「一年ぶりか? お前は本当に楽しそうだなぁ」
「――何でアンタ(・・・)がそれを着てる、何でアンタ(・・・)がっ!」

 ギズーのその声はレイ達にも届いていた。距離にして約百メートル程、小さな丘に立ち、その向こうにいる帝国兵にシフトパーソルを突き付けている。それしか彼等には分からなかった。

「アレがお前の言う仲間(おともだち)か?」
「答えろ! 何でアンタ(・・・)が今なんだ、何で!」

 ギズーの表情からは明らかに動揺と焦りの色が滲んでいた、いつもの面倒くさいと言う表情からはかけ離れたその顔。右頬に流れる一滴の汗。今までのギズーからは想像もできない表情だった。

「――――だ、まだお前は足りないっ!」

 一発の発砲音が聞こえた、同時にギズーの体が宙に浮いて右肩から出血していた。シフトパーソルで撃ち抜かれたようにもレイは見えた。

「ギズー!」

 突然の事に走り出した、何故シフトパーソルを突き付けているギズーが打たれたのか。何故ギズーは引き金を引かなかったのか。訳が分からないまま撃ち抜かれた瞬間を目撃したレイは小さな丘から転げ落ちるギズーの元へと走った。

「ちっくしょうっ!」

 左手で右肩を抑えるとそのまま先ほどの場所まで走った。そして今しがた話をしていた人間の元へと移動したが、そこには誰も居なかった。
 レイが駆け寄って来てギズーと同じように辺りを見渡す。しかしそこには誰も居なかった、まるで最初から誰も居なかったかのようだ。