「ファリック、お前は南だ」
「分かりました、ギズーさんは北の丘をお願いします」

 二人はそう背中越しで呟くと互いに走り出した。
 狙撃ポイントは二つ、一つは彼等から北側の小さな丘の上。もう一つは南西にある大岩。互いに走り出してそのポイントへと急ぐ。

「ギズー!」「ファリック!?」

 レイとミラが二人の行動を見て叫んだ、そして二人の予想は的中していた。
 ファリックが向かった大岩の陰から夕陽に照らされたショットパーソルが一瞬だけ光るのを見逃さなかった。初弾が発砲されるとファリックの顔数センチ横を掠めていく。
 ホルスターからコルトパイソンを引き抜くと銃身目掛けて引き金を引いた。
 轟音が鳴り響き岩陰から少しだけ見える銃身に弾丸が命中するとショットパーソルを弾き飛ばした。すると隠れていた帝国兵がシフトパーソルを右手に構えてファリックの前に立ちはだかる。姿を確認したファリックは再び引き金を引いた。その弾丸は相手が引き金を引く前に持ち主のシフトパーソルを撃ち抜き、二発目で使用者の頭部を破壊した。

 時同じく北側へ走り出したギズーも小さく光るショットパーソルを見つけると即座に右足のホルスターからシフトパーソルを引き抜き発砲した。
 こちらも同様に銃身に弾丸が当たるとショットパーソルを弾き飛ばすことに成功。そのまま丘を駆けあがって使用者の頭にシフトパーソルを突き付けた。

「舐めた真似してくれるじゃねぇかこの――」

 そこでギズーの言葉が止まった。
 離れた位置にいるレイはギズーの姿をしっかりと見ていた。氷結剣聖結界(ヴォーパルインストール)を発動させる準備を完了させ、いつでも防御態勢を取れる状態にまでなっていた。しかしギズーの様子がおかしい事に気付いた。