微かだが煤が見えた、こんな所で燃える物なんてある訳が無い。旅人が暖を取る為に焚火をしたのかとも一瞬考えたがそれは直ぐに否であると分かった。その煤は小さいながらも周囲に小さく広がっていた。

「まさかとは思うが、ここは宿場町(ケープバレー)か!?」

 ガズルのその声にレイとギズーも辺りを見渡した、確かに煤が辺りに散らばっている。よく見ると所々に煉瓦が小さな破片となって転がっていた。

「あり得ない、二日だ。たったの二日で街が一つ跡形もなく消滅するなんて事あり得ない!」
「じゃぁこの状況をどう説明する! 位置的にも大体この辺りなんだぞ!」

 必死にレイが否定したがガズルはその発言自体を否定した。
 決して大きな町では無かった。しかし小さい町でもなかった。宿場町として機能する程度は様々な物が備わっていた。それがたったの二日で消滅してしまった。しかしどうやって?

 それに気づいたのはミラだった。

「周囲に残るエーテル反応から多分、かなりの大規模法術が使われたんだと思う。それも今の僕達じゃ扱う事も出来ない程の術式」

 言われてアデルとレイが周囲のエーテルを探った。するとどうだろう。二人の顔色が一瞬で変わった。

「どれほど時間が経ってるのか分からねぇが、この町全体を覆う程のエーテル反応だ」
「それだけじゃないよアデル、濃度もまるで桁違いだ。先生とまでは行かないけど――シトラさん以上の使い手かもしれない。グラブの余裕はこれだったのか」

 感知できないギズーとファリックは再び周囲を見渡した。
 もしもコレが罠で、彼等が立ち止まっていることがその想定範囲であれば物陰から狙われているかもしれない。咄嗟に二人はそう考えていた。互いにシフトパーソルの使い手であり、仮に自分が敵だった場合どっから狙撃するのが一番都合が良いのかを考える。