自分自身そこまで考えが至らなかった事に苛立ちを隠せなかった、アレ以来ガーディアンの行方も分からず現状も未来改変の可能性が掛かっている爆弾を背負っているような物。
 しかし、誰一人ガズルを攻める者はいなかった。いや、責められる筈が無かった。そんなことまで配慮をしていた人が誰か一人でもいただろうか?
 かのカルナックですら最初は記憶を呼び起こすために御師であるシュガーを呼び寄せた位だ、その呼ばれたシュガーも賢者と言われる知能と知性を合わせていたにも拘らず、好奇心が先行していたのだ。
 よって今はその事を責めるより今後どうするべきかを考える事の方が有益である。現状カルナック含め至高の弟子達は爆弾を抱えてしまっている。かと言ってここまで関わった以上、レイと言う人間は放っておくことが出来ないお人よしだ。見捨てる事なんて出来るはずがない。

「んじゃぁオイラ達はどうすれば良いんだい?」

 事情を把握したファリックが珍しく口を開いた。

「安心しろよ、俺達のリーダーはこんな事でお前達を見捨てる程愚かじゃない。むしろその逆でどうにかしてやりたいってお人好しだ」

 その問いに答えたのはギズーだった、今までの彼ならば何も言わずに睨むか「俺達は便利な何でも屋じゃねぇんだ」と捨て台詞を吐いていただろう。レイとの約束がそれほど彼にとって重要な事だと分かる。

「――だが、それは俺達を裏切らなかった場合の話だ。もしも裏切る様なそぶりを見せるもんならそれはレイとの約束の範疇外だ。その時は容赦なく後ろからだろうが何だろうが撃ち抜く」

 その一言を聞いてミラは何故か安心した表情をしていた。ファリックの顔を見て一度頷くとレイの隣に座る姉にも同じようにして頷いた。

「なら大丈夫だね、ここまでしてくれた人の事をボク達は裏切る真似絶対にしないよ」
「その言葉、今は信じておこう」

 今まで彼等の間にあった溝が少しだけ埋まった気がした、ミト達三人は彼等に信頼を。レイ達は彼女達を信じると約束を交わした瞬間だった。

「良い話だねぇ、おじさん涙が出ちゃうよ――」

 外から聞こえたその声に一同は即座に反応した。初めて聞いた声に混じって届く僅かな殺気が彼等を瞬間的に動かしたのだ。低いその声は窓の外――カルナック家の庭から聞こえた物だった。