「良いですかアデル? 彼女達はこれから先。つまり、私達の先二千年の歴史を知ってます、その歴史の中で何が起きて何があったが彼女達の頭の中に入ってます。それは物凄く危険な事なのですよ」
「だから何で危険なんだよ?」
「少しは考えなさい……すでに彼女たちがこの時代にいることで未来に変化が起きかねているのです。未来が変わってしまえば彼女達の存在が危うくなってしまいます」
「……つまり?」
「彼女達の存在そのものが消えてしまう可能性があるのです、彼女達からすれば今この時代はいわば過去です。過去を変えてはいけません。未来そのものが変わってしまうのですよアデル。その結果彼女達が生まれなくなる世界になってしまう可能性も否定できません。そして何より――」

 カルナックはそこで一度言葉を選ぶために口を閉じる。そう、その先の言葉は彼等にとっても死活問題になりかねないからだ。だがその一瞬の静寂を破ったのは意外にも。

「この戦争そのものが変わってしまうかもしれんのぉ」

 シュガーだった。

「良いか小僧、この娘たちの記憶が蘇って帝国の手に渡ってみろ。仮に帝国側が勝利するならまだしも負けてしまうという事態が未来で確定しているのであればそこに打開策を見出すじゃろう。そして勝利が確定した後娘たちは消えるか殺されるんじゃ。それが未来改変に繋がる可能性があるからカルナックは反対したのじゃ」

 ガズルはその話を聞いて頷いた。そして補足するように続けて話をする。

「その考え迄至らなかったのは俺の責任だ、だけど自体は予想以上に悪い方向に進んでる可能性だってある。先のガーディアンがもしも帝国の手に渡っていればこの戦争帝国側がかなり有利になる。そこにこいつらの記憶まで渡ったらもうどうすることも出来ねぇだろうな」