体全体に走る激痛に表情が歪み始め、ついには膝をついてしまった。それを見たギズーは青ざめた表情でレイを見た。

「なんでだ……何でお前はそうまでして――」
「良いから――ここは僕に任せて」

 魔法陣がゆっくりと消えていく。それとほぼ同時にレイは激痛のあまり意識を失ってその場に倒れ込んだ。




 あれから三時間、意識を取り戻したレイは見覚えのある天井を見つめていた。カルナック家のレイが住んでいた部屋だ。

(目が覚めたか少年)
「うん、咄嗟に出ちゃってごめん」
(全く、無茶もほどほどにしなくてはな。相容れないエーテルが体内に残ってる状態で表に出たらこうなると分かっていただろう)
「それでもでなくちゃって思ったんだ、アイツを止める為に無理やりにでもね」
(その結果暴走寸前だった、今後はあのような無茶はしない方が良い。その内エーテルに食われるぞ)
「忠告痛み居るよイゴール」

 ゆっくりと体を起こしベッドから出ようとした時、自分の体に寄りかかってるものが在ることに気付いた。

「――ミト?」

 スゥスゥと寝息を立てているミトの姿があった。うつ伏せで両手を枕にして寝ている。きっと寝ている間に看病してくれていたのだろう。

(そもそも少年は何故この娘を助けようと思ったのか? まだ出会って日も浅い、ギズーの言う様に敵側の差し金の可能性だって否定できない)

 イゴールの言う事は一理あった。
 この数日様々な事が起きている、帝国との接触もそうだがあの得体の知れない機械仕掛けの巨人。そして何より彼女達の出現。
 正直レイも疑ってはいた、得体の知れないエーテルの正体は別として突如彼等の前に現れた事。そしてあの戦闘能力の高さと記憶喪失と言う異質。考えれば考える程怪しい事ばかりだった。

 それでもレイは彼女達を信じようと思った。理由はいくつかあったが、彼の中で決定的な事が一つ。