少し間を置いてバスカヴィルが反応した、魔法陣のすぐ傍にいた事もあり魔力暴走の影響を少なからず受けていた。一瞬体が硬直し思考が停止する。気が付いた時にはシュガーの体は宙に舞っていたのだ。

「いてててて……これは予想外じゃ」
「魔力暴走など貴方らしくもない、何があったのですか?」

 カルナックは小柄なシュガーを受け止めると静かに地面へと降ろした。この間アデルを含めた三人は何もできなかった。

「予想以上に厄介じゃな、こやつらの記憶は意図的に封印されておるようじゃ」

 その言葉にいち早くギズーがホルスターからシフトパーソルを引き抜いて躊躇なくトリガーを引いた。確実に殺意有っての発砲だった。しかし弾丸はまだ光り輝く魔法陣の内側に入ると即座に蒸発した。

「ギズー!?」

 顔の横スレスレを弾丸が飛んで行ったアデルが振り向いて叫んだ。同時に彼の表情を見て驚く。いつもぶっきらぼうな表情で覚めている彼の顔が敵意丸出しでミト達三人を睨みつけていたからだ。

「意図的に封印された記憶だぁ? やっぱりテメェら帝国の差し金何だろう!」
「何言ってんだよお前!」
「意図的って事はだ、都合よく戻せる可能性だってあるって話だろ。レイに何か危害が加わる前に殺してやるんだよ!」

 隣にいたガズルもギズーを宥め様と止めに入るが聞く耳を持たない。そしてもう一度引き金を引いた。

「ギズー!」

 発射された弾丸はまたもやアデルの顔スレスレを通過して飛んでいく。しかし魔法陣に入るかどうかの手前で霊剣で弾かれた。瞬時にバスカヴィルとチェンジしたレイが炎帝剣聖結界(ヴォルカニック・インストール)が解除される前に出てきていた。相容れないエーテルにレイの体は悲鳴を上げる。

「落ち着けよギズー、まだ何もわかってない。まだ何も分かってないっ!」