「良いか小童共、今からお主達の頭の中を覗かせてもらう。何がどうなって記憶が失われてるか分からんがこれなら原因を探れるじゃろ。ちぃっとばかり体への負担はあるが安心せぇ。死ぬことは無いさね」

 笑顔でそう告げられた。
 ミト達は若干顔を引きつりながらもその説明に頷いて術式開放の時を待つ。

「ではバスカヴィルよ、お主のエーテルを儂にも分けておくれ」
「はい、シュガー様」

 バスカヴィルがシュガーの肩に手を乗せると辺り一面が緊張する。途方もないエーテルがその場に満ちていくのがその場にいる全員が感じ取った。ましてやエーテルをほぼ持たないギズーからすればちょっとした精神寒波に近い物がある。

「この感覚久しぶりだな、レイが緩和してくれてたから最近は分からなかったが……よく先の戦いで生き延びたよ俺」
「同感だな、エルビーとレイヴンの精神寒波をまともに食らってたら一溜りも無いだろうよ」

 ギズーが身震いしながらその場で耐えている。その隣でガズルもまた同様にしていた。
 その二人を背にアデルはと言うと、全く動じていない。先の戦いから半年である程度のエーテルコントロールを身に着けた彼だが、その成長は目を見張るものが在る。
 また同時にその姿を見てカルナックは愛弟子の成長をその目に確かに見た。

「十分じゃ、では行くぞ」

 右手に持つ杖を魔法陣に突き立てると閃光が轟いた。一瞬目を覆う程の光が放たれた後、ゆっくりと光は収束していく。そして――。

「っ!」

 突如シュガーの体が宙に舞った。弾き飛ばされたようだった。咄嗟の事で瞬時に反応できたのはカルナックだけだった。落下地点を予測し即座に走り出して受け取る体制を取った。

「シュガー様!?」