「――厄災剣聖結界(バスカヴィルインストール)

 レイの足元から青白い炎が噴き出した、何時ぞや見たイゴール出現の炎だ。
 真っ青な髪の毛は次第に赤く変色し、顔つきも変わり始め、裏でひっそりとしていたイゴールが前へと現れる。ゆっくりと瞼を開くと懐かしい景色が目に飛び込んできた。

「この場所でまた現界するとは思いませんでしたよ、カルナックさんご無沙汰しております」
「やぁ厄災、あの時と違って今は紳士的なのですね」
「揶揄わないでください、あの時はどうかしてたんです。それで――」

 カルナックの横に立つシュガーを一目見て理解した、懐かしいまでのエーテルと過去千年以上触れられなかった純粋な魔族としてのエーテルを感知する。

「あぁ……お久しぶりで御座います、シュガー様」
「千年ぶりじゃなバスカヴィル、最後に会うたのはお主がまだ小童の頃じゃったか。体と言う依り代から解き放たれた感想はどうじゃ?」
「悪くは無いですね、私の体はまだ異空間に封印されたままですが――今はこの少年の目で世界を見て、この少年と共にあります」
「そうか――」

 シュガーはバスカヴィル(レイ)の肩に手を置くと久しく見る同族のエーテルを感じていた。

 千年だ。
 千年もの間感じる事の出来なかった個体をこの時久しぶりに感じ取り、目じりには涙がにじみだしていた。

「さて――」

 バスカヴィルとの再会をそこそこにシュガーは彼女達三人へと顔を向けた。術式は既に整っており後は強力なエーテルを注ぎ込むことで完成する。魔法陣は次第に青白く光り輝き術式開放へ着々と進んでいた。