ミラが堪らず口を開いた。この時代に現れてからレイというほぼ化け物に近いエーテル量を感知しながらもそれ以上の存在を目の当たりにした。敵意を向けられた時もそうだったが解除された今もまだ足の震えが止まらないでいる。それはミトも同じだった。
 顔面蒼白で手足は震えている、隣に居るレイも心配そうに横目でその様子を伺っているが収まる気配はまだ見当たらない。

「それで先生、何とかなりますか?」
「レイ君、私を何でもかんでも解決できる便利屋さんとでも思ってるのですか? 流石の私も記憶に関してはどうにもできません。なので――」

 カルナックの後ろに轢けていた小さな女性が顔を覗かせる、レイとアデルは見た事も無い女性が突然現れた事に少し驚く。ファリック程の身長で小柄の女性がそこに居た。

「紹介します、彼女は――」
「お主らがこの馬鹿弟子(カルナック)の弟子かの?」

 顔を覗かせた女性はゆっくりとカルナックの背中から姿を現すとゆっくりと歩いてくる。フード付きのマントを羽織り右手には杖を持っている。

「ほほう、面白いのぉおぬしら。特にそこの青髪の小僧――中に何を飼っている?」

 その一言でレイは思わず霊剣を幻聖石から具現化させる、咄嗟の事だった。常人では感知することも出来ない存在を一目で看破されたのだ。

「貴女は……いったい?」

 一歩下がるとレイの前にアデルとガズル、ギズーの三人が立ち塞がるように女性の前に立った。

「おやっさん、こいつ一体誰なんだよ。イゴールの事話したのか?」
「いえ、一言も話してはいませんよ。この人こそ「人ならざる者」ですからねぇ」

 笑顔のままそう答えた。
 女性はパーカーを脱ぐとカルナックの横に立つと一つため息をついて改めて自己紹介を始める。

「儂はシュガー、「シュガー・リリック」。おぬし等の師カルナック・コンチェルトの師匠じゃよ」