「はい――えぇその通りです、グラブの報告ではホバーウォーマーで一気に砂漠越えを企んでいるそうです。――はい。かしこまりました、ではその様に」
一方、先ほどレイ達を監視していた一人が通信機で誰かと交信を取っていた。そう言えばこちらの詳細について話していなかった。軽くだが触れておこう。
現在通信を行っている男、名をダル・ホンビードと言う。階級は大尉、灰色のエルメアを着て背中にはハルバードを背負っている。また、グラブと呼ばれた男、こちらは先ほど望遠鏡でレイ達を見張っていた男だ。同じく階級は大尉で同じ色のエルメアを着ている。
「所で少佐、彼はどこで拾って来たのですか? ――なるほど、東で。――いえ、あれほどの狂犬を良く手懐けたと思いまして。――それはそれは」
そして最後の一人、赤いエルメアを纏うこの青年。
先ほどから一言も喋らず不気味に微笑んでいる彼もまた、この二人と共に行動するだけの力を持ち合わせている。引き込みで帝国に加入したとはいえ初めての階級が中尉である。実力社会の帝国としては異例の階級であり、また前例は無かった。
「それで彼に付いて少々お話が。――いえ、作戦に変更は何らありません。ただ」
ダルが通信機を耳に当てながら顔を上げると、そこには真っ赤に燃える炎が見える。黒煙が立ち上がり一目で大規模火災が起きていると分かる。しかし、レイ達の場所からではあまりにも距離が離れすぎている為この煙に気づくことは無かっただろう。
「奴らを匿った罪で数名を公開処刑し、それに反発した為――えぇそうです」
大きな炎はこの距離でもダルの目にきちんと届いていた、そして同時に風に乗って運ばれてくる不快な臭いも同時に。眉間にしわを寄せて数時間前に起きた惨劇を思い出しながら報告すべき事を通信相手へと伝える。
「ケープバレーは消滅しました、生存者確認できません」
砂漠のオアシス、宿場町ケープバレーはたった一人の手によって全滅していた。