法術の準備を整えたミラが着弾した弾丸へとエーテルを注ぎ込むと一面に電流が走った、この時ミラは心底驚いていた。一瞬だけ電流が走ったと思うと次の瞬間スパーク現象を起こした。
 また同時にアデルに向けられた弾丸の雨はぴたりと止んで、盗賊団の半数以上が倒れた。

 ガズルの作戦はこうだ、まだ先の長い砂漠越えを警戒しての最小戦力での敵陣撃破。アデルを囮にすることで絶対零度の障壁緩和、同時に万が一に備えてウィンチェスターに弾丸が命中し破損することを回避。
 使用したのは雷の法術弾、だがこれは使ってみて初めて分かったことがあり運用に難点があった。一つは着弾時の法術発動ではなく弾速を可能な限り加速させる効果、それを封じ込めるために二重に法術を重ねることで弾速向上と着弾後の発動を可能にさせる。ただし、着弾後自動的に発動する事は出来ないことも実験済みで、起爆となるエーテルが必要となる。そこでミラのエーテルで起爆させる。

 アデルには申し訳ないがこの中で一番体力があることも考慮して全速力で走って逃げ回ってもらう、仮に弾丸が命中するような危険性があった場合ファリックがその弾丸を打ち落とす。ミトはレイの消耗した体力とエーテルを補給。ガズル自身は相手の出方を観察して次の一手を打つために警戒していた。

「おーおー、半分以上片付いたか」

 主に前線にいたのはショットパーソルを所持していた者ばかりだった、遠距離で一方的に撃てば勝てるだろうと思っていたのだろう。それが外れた今近接武器を所持している後方の三十人程がジリジリと後退し始めるのをアデルは見た。

「もう少し数を減らした方が良いな、また奇襲を受けても面白くねぇ」

 そう言うと散り散りになって逃げようとしている残りの盗賊団の元へとアデルは跳躍した。