「だから笑わせてる訳じゃないって言ってるだろレイ、それよりお前らここから十一時の方角に砂煙が上がってた。ちょっと飛んで確認してみてくれ」

 右手で涙を拭き取りながらレイは真剣に語るアデルの顔を見た、ガズルもまた同じくしてその表情を見て冗談でこんなことをしてるのではないと察する。互いの顔を見合わせた後同時にその場を飛んだ。

「十一時の方角って言ったよね」
「あぁ、あっちだな」

 空中に飛んだ二人は同時にアデルの言う方角を見る、すると確かに砂煙が上がっていた。それはゆっくりとだがこちらへと近づいてくるような気が二人はした。
 最初こそ小さく見えたソレはゆっくりと彼ら七人のほうへと進んでくる、徐々に大きくなる砂煙にガズルの顔は一気に青ざめる。

「何かこっちに来るぞ!」

 叫んだ、その言葉に下にいた五人は一斉に戦闘準備へと移行する。
 上空にいる二人は徐々に加速して接近してくるそれの正体を確認しようと目を凝らす、見えるのは砂煙。彼らの移動速度より早いソレは確実に迫ってきていた。

「ガズル、なんだと思うアレ」
砂蚯蚓(サンドワーム)じゃ無い事は確か、砂中を移動するからあんな煙りだして激しく移動することは無い。となると後は砂漠と荒野名物だった――」

 二人が地面に着地すると同時にレイの法術で互いの体が一瞬だけ浮いた、そして砂の上にゆっくりと足をつけると両名も戦闘態勢へと移行した。そして

砂漠大盗賊団(サンド・オーバーシーフ)!」

 小さな砂煙だったそれは七人の前まで到達し、大群で迫ってきた砂漠大盗賊団の一角が見えた。かつてレイ、アデル、ガズルの三名によって討伐された一段の成れの果て。海上商業組合(ギルド)より盗賊団の情報も得ていたガズルはその存在を認識していた。

「っ!」