彼ら四人は強くなった、だがそれは一般の帝国兵を相手にした時の話である。まだこの世界には先に述べた通りカルナッククラスの化け物や四剣帝クラスが残っている。そして何よりレイの中で気がかりなのは先の戦闘で戦ったあのエルビーと言う未知の生命体。同時にエルビーが残したあの言葉。

”私は幻魔一族の『エルビー』、ちゃんと覚えておいてね坊や達”

 思い出すだけでレイは冷や汗が止まらない。

「幻魔一族――まだ他にもエルビーみたいなのがいるって事だよね」

 一度深くため息をついて両手を後ろでついた。上半身をのけ反らせて満点の星空を見て。

「メル、君は一体何と戦っていたんだ。そして僕は一体誰なんだ」

 彼女の言葉が頭の中を巡る。同時に現状残されている課題についても思考が止まることなく回りだす。
 やることは沢山残されている、現状の戦力強化にミト達三人のこと。そして戦争となった帝国との戦いのこと。考えれば考えるほど答えなんて見つからずグルグルと回りだす。それがレイをある意味追い詰め始めていた。

 自分たちは一体何に巻き込まれたのだろうか、そもそも帝国との戦争に一体何の意味があるのか。
 いや、帝国との戦争にはもちろん意味はある。現在のこの腐りきった世界を変えたい、そう彼らは願い。刃を向けた。そこから始まったこの戦争がいつまで続くのか、そして帝国の思惑とはいったい何なのか。何がしたいのか。これ以上人々を苦しめどうしたいのか。考えれば考えるほどわからないことだらけだ。
 それでも一度刃を向けてしまったのだ、もう後戻りなんて出来るはずがない。民衆は彼ら側に付いている。それも中央大陸全土で戦争が始まるぐらいには広がっている。

 言ってしまえばこれは革命だ。今の帝国に反旗を翻したのだ。
 火種を作ったのはもちろん帝国だ、それに燃料を投下したのはギルドと彼ら四人。世界各地でくすぶっていた火種にオイルを掛け炎上させた。

「この世に、平穏のあらんことを――か。中々難しいよメル」

 寂しそうな目でそう呟いた。