「テメェは……現状は序列筆頭にアデル、時点でフィリップだ。残りの二枠に関しちゃぁ帝国と西大陸にいるって話だが詳しくは知らねぇ」
「帝国にもまだそんなのが残ってるのか、もしかして噂の先生と一緒に旅をしたっていう――」
「それはあり得ねぇ、アルファセウスの実力は四剣帝どころの話じゃねぇ。あのエレヴァファル・アグレメントだって剣老院(カルナック)と同格の化け物だった。もう一人がそれ以下でましてや四剣帝クラスだとは思えねぇ。間違いなく化け物だ」

 そう言って、自分自身で青ざめた。
 ギズーの考察は多分間違ってはいない、アルファセウスという名はこの世界では英雄に等しい名であり、その力は世界の均衡をいとも容易く崩しかねない存在である。現状カルナックの戦力が落ちた事で総合戦力は帝国が有利であり、その強さはカルナック本人だけが知る。
 そのカルナックが言う、間違いなく対峙したくはないと。かつての英雄にそこまで言わせる相手がまだ帝国には残っていた。

「ゾッとするな、アルファセウスの最後の一人と俺の兄貴。こっちはエースとキング、クイーンがいるが相手はジョーカー二枚。どう立ち向かう? ポーカーフェイスなんて通じねぇぞ」
「そんなこと言われたって僕だってわからないさ。神様にでも祈る?」
「本当に呑気な奴だな、神なら休暇取ってバカンスに行っちまってるぞ」
「それなら仕方ない、それも踏まえて先生に相談しよう」

 そう言ってレイはギズーと見張りを交代する。満点の星空の下でレイは少しだけ困惑していた。現状の戦力と相手側の戦力。どう図ってもこちらが今は不利であり、帝国が本気で仕掛けてきた時の事を想像して冷や汗をかいた。