「謝るんじゃねぇ、レイがそうするって言ったから俺も一緒に付いて行ってるだけだ。断じてお前ら三人の為じゃねぇんだ。そこ忘れるんじゃねぇ」

 睨み続けながら煙草でミトを指しながら静かに言った。そして立ち上がると岩場の一番高い所へと昇っていく。

「おいギズー、どこ行くんだよ」
「見張りだよ、後で起こしに行くからてめぇは寝てろアデル。後お前らも今の内にきちんと休んでおけよ。特にお前だミト」

 岩場のてっぺんに到着すると胡坐を掻いて遠くにあるはずのケープバレー方向を見つめる。

「お前、常時俺らに治癒法術かけ続けてたろ、この中で一番疲労困憊してるのがてめぇのはずだ。お前は見張りやらなくていいからゆっくり休め」

 その場にいる全員が驚いた表情をした、特に一番驚いていたのはミトであろう。彼女は少なからずギズーからこの一日ずっと敵意を向けられていた事を理解していた、それが今では自分の不注意を言われるだけでなく体の心配をしてくれたこと。それに驚いていた。

「――あなたは私のことが嫌いだと思っていたわ」
「あぁ、大っ嫌いだね。だがそれ以上に俺達の事を思ってずっと治癒してくれてたんだ。それが分からねぇ程俺は愚かじゃねぇ」

 その言葉にどれほどミトはうかばれただろうか、背を向けるギズーに一度深くお辞儀をして再び座ると緊迫していた糸が切れたように意識を失った。そのまま彼等を包んでいた治癒法術は解除された。そしてそのまま体をレイに預けるように倒れた。

「え、ずっと法術使ってたのかこいつ」

 一人だけ、アデルだけはミトが何をしていたのかがわからずに居た。



 二時間か三時間ほど経った頃、レイが目を覚ました。