各自荷物を分担して担ぐと集合場所へと集まってきた。
 町の入り口、つまり砂漠側へと各々集まりだすと彼らは町に一礼してから歩き始めた。見送るのは以前助けた町長の娘とガトー、そして数人の町人である。

「行ってしまいましたねガトーさん」
「あぁ、でもあいつらなら砂漠越えできるだろう。なんせあのカルナック・コンチェルトの弟子なんだからさ」
「そうですね、あの人も今では隠遁生活ですか。またお会いしたいものです」
「あぁ、きっといつかまた会えるさ。この町の英雄に」

 カルナックが成し遂げた武勇伝にはいくつか記録に残されていないものもある。それがこの町ケープバレーでの武勇伝であった。遡ること十数年、まだこの娘が幼子だった頃にまでさかのぼる話である。だが、その話はまたいつか。



 夕方前に町を出発した彼等は急ぎ足で砂漠を駆ける。ある程度行った先に小さな洞窟がある、まずはそこを目指すことになる。と言っても彼らの急ぎ足とは通常に大人でいえば全力疾走に近い移動速度程である、レイの風法術を応用した移動術である。
 レイを最後尾に設置してそこから追い風を発生させ、またそれとは別に各々の空気抵抗をできる限り減らすことでこれだけの人数ではあるが移動速度を上げることに成功させる。発案はガズル。

 そのおかげか、出発から三時間ほどで目的の岩場まで到達できた。日はとうに落ちて満点の星空が空に広がっている。日中とは打って変わって気温が大きく下がる砂漠地帯。ここで重要になってくるのがアデルの炎法術だった。持ち込んだ小さな薪を地面に並べるとアデルがすかさず着火させる。すぐに火が付くとその周りを取り囲むように彼らは座った。

「予想以上に早く着いたな、これなら明日の昼には砂漠超えられるかもな」