「やっぱり辛いところだなぁ、西大陸の蒸気機関ってのがこっちにもあればまた違うんだろうけどな」

 ガズルとレイが地図を見ながら半場絶望する。当初の予定では亀裂の西側を回ってカルナック家へと行く予定だったのがまさかのグランレイク越えからの大砂漠越えである。

「無いもの強請(ねだ)りしても仕方ねぇぞお前ら、とりあえず携帯食料と大量の水持ってさっさと砂漠超えようぜ。シフトパーソルに砂が入って仕方ねぇ」

 ギズーの言うことにも一理ある、ここで休憩しているのはあくまでもレイとアデルの回復が主であり、それがある程度済んででいるのであれば一刻も早く町を出るべきである。
 理由としては二つ、一つは何時帝国が迫ってくるかもしれない状況であること、もう一つは夜になる前にある程度砂漠を進んでおきたいという所だろう。

「それもそうだな、俺はミトのおかげでかなり回復したけどレイはどうだ?」
「僕も何とか大丈夫かな、ただ連続戦闘みたいな場面だけは出くわしたく無いのが本音。と言っても砂漠に入っちゃえば危ない動物も帝国兵も居ないから後は単純な体力面かな」

 アデルが懐から煙草を取り出して法術で火をつける。横目でそれを見ながらギズーも同じく煙草を取り出してアデルに火を求める、面倒臭そうに左手で指を鳴らすと摩擦熱を利用してわずかな火を作り出してそれを放る。アーチ状にゆっくりと落ちてくる火はギズーのくわえてる煙草の先端に当たると小さな音を立てて着火した。

「相変わらず器用な事するなお前は、いっその事曲芸師にでもなったらどうだ? 曲師アデルってな」
「馬鹿言うな」

 ガズルが一連の作業を見てアデルを揶揄うと、煙草を咥えたまま両腕を頭の後ろへと回して背もたれにグッと寄りかかった。二人のやり取りを見てレイがほほ笑むと席を立つ。

「よし、そしたら準備して砂漠に入ろう。おやじさんお世話になりました」
「なぁに、いつでも戻ってきてくれ。お前らは俺達の希望なんだ。水はどれだけ必要だ? かき集めてくるぜ」