現在帝国に残る勢力は一般歩兵と銃兵、各地に散開している部隊と遊撃師団のみ。
 この中にもう一人、一騎当千と呼ばれる軍人がいる。それがカルナックを裏切った最後の一人である。カルナック曰くエレヴァファル以上に対峙したくない相手だという。

「んで、その最後の一人ってどんな奴よ」

 酒場町に到着した彼等はいつぞや世話になった酒場の一角を借りて休憩をとっていた。アデルは全身打撲を負っていて今はミトの治癒法術にて回復中である。もう一人テーブルに伏せているのが彼らのリーダーであるレイだ。あれだけの極大法術を使った後だ、精神的に疲労困憊であろう。
 地図を開いて今後の進路を模索してるガズルにシフトパーソルの手入れをしていたギズーが口を開いて質問した。

「さぁ、俺も詳しいことは知らねぇんだ。おやっさんの過去話なんてお前らが知ってる位の武勇伝とかその程度だしな」
「なんだよ使えねぇな、お前それでも現存の弟子かよ」
「そんなこと言われたって仕方ねぇよ、聞いても教えてくれないしアリス姉さんも知らないんだ。そもそも『アルファセウス伝記』って本にもなってる位だろ? それを読めば多少なりわかるんじゃないのか? 俺は読んだことねぇけど」

 やっと痛みが引いてきたアデルがミトに礼を言って帽子の位置を直しながら返答した。
 そう、カルナック達が起こした数々の武勇伝は書籍化されて一部では熱狂的なファンが居るほどだ。だが当のカルナックからすれば日記として残しておいた記録がギルドによって勝手に修正と加筆を加えられて出版された書物であり本人としては興味がない。

「でもよ、あのエレヴァファルだって右腕と引き換えにやっとこさ倒せたって相手だろ? そんな化け物と同等かそれ以上って本人が言ってる相手にどうやって太刀打ちするんだ? 俺たちじゃどうやったって勝てないだろ」