照りつける日差しが容赦なく旅人の体力を奪う、砂漠と荒野の中間に位置する唯一のオアシスであり、旅人の拠点としても使われる小さな酒場町(ケープバレー)は今日も多くの旅人を受け入れていた。
 一年前、この地で暴れていた盗賊団は三人の少年により全滅させられた。それ以来この地を騒がせる荒くれ者はいなくなり本当の意味でのオアシスとなっていた。この辺りは帝国の手も薄く騒がしい日常という物は一ヵ月に一日あるかどうかとなっていた。その一番の功績者が現在の剣聖レイ・フォワードである。

 彼が剣聖の称号をカルナックより受け継いだ一報はこの町にも届いてた。それはそれは大々的に祝われたそうだ、またそれと同時に世界各地へと報道された反帝国組織の結成、これもまたこの町にも轟いている。彼等は自分たちが思っているほど以上に世界にその名を行き渡らせていた。
 これには当の本人たちも驚いていただろう、何せ彼らは自分たちがやりたいようにやっているだけで、決して世界平和の為と言う訳ではなかった。強いて言うのであれば帝国の思い通りに事が進むことが何より気に入らなかった。ただそれだけだったのだ。

 それが今では世界中の救世主のような扱いをされている地域さえある。それは中央大陸南部の貿易都市、そして彼らの拠点であるメリアタウンである。
 そして、当然のように帝国からは危険人物としてリストアップされている。これは言うまでもないだろう。
 半年前に帝国の主力部隊でもあった特殊部隊を壊滅、当時の剣帝序列筆頭のレイヴン・イフリートとその上官であり、先代の剣聖カルナック・コンチェルトの友人兼ライバルであったエレヴァファル・アグリメントの両名を失う事となった。それは帝国の戦力の半分を失うにも等しい。彼等は文字通りの一騎当千であった。