ミトの予想は的中した、躊躇なく丸太を蹴り飛ばすと体にグンと加速が掛かる。それと同時に丸太が氷の上を滑り出してガズルの握るロープのたるみが無くなってピーンと張り詰めた。同時にガズルの体が宙に浮く、いや、正しくは引っ張られて放り出されたというのが正しい。

「あんた本当に馬鹿ね!」
「だって手っ取り早くやるならこうするのが早いだろう!」

 そんなやり取りをしている間にガズルの体が落ちてくる。ミトは顔と一緒に目線も動いてガズルにそれを知らせようとするが、ガズルはロープにしがみつくので精一杯のようだった。自分でもどんどん落下していることは気づいているが現状の態勢ではこのまま氷に激突し、引きずられる事も脳裏をよぎった。だが現実はその通りに動く。

「っ!」

 腹から落下し右手でロープを何とかつかみズルズルと引きずられる結果となる。ミトは絶句しながらもあまりにも予想通りの落ち方と悶絶に笑いが出てしまう。ガズルには申し訳ないと思いながらもどんどん笑いが込み上げ、止まらなくなる。

「ぷ……あはははははははは! お腹痛いっ」

 よく腹筋が崩壊すると聞くがきっとこの事なのか、笑い声がガズルの耳元に届くと自分が置かれている状況の恥ずかしさと強打した痛さが同時に彼を責め立てる。だが彼の不運はまだ終わらない。

「いてぇっ!」

 もう一度ガズルに衝撃が襲う。体に重しがかかったような感覚を覚えるとロープを握る右腕に激痛が走った。それと同時に右足首に違和感を感じた。

「ガーズールー――!」