同じく目の前で起きている異常な光景にギズーもそう確信していた、これも一会に普段の努力の賜物である。先の事件よりレイは普段より常にエーテルをコントロールする事に力を入れていた。この暑い夏ですら常に冷気を放出し外気温を調節、さらには体温調整までやってのける程の法術使いに成長していたのだ。変わって剣の腕は現状アデルの方が一枚上手ではあるが。

 次第にレイの体から冷気が薄れつつあることを一同は感じる。エーテル切れを起こす寸前まで絞り出しているレイの表情に初めて苦悶が見えた。今まで法術を使ってこれ程消耗したことは無い、先の事件ですらここまでの消費は無かった。それほど異常な作業であることをレイ以外の全員が感じていた。特にガズルとギズーは。

「――ここまでかな、きっと対岸まで届いてない。これ以上は僕のエーテルが持たないよ」
「十分だ、対岸まで届いてなくてもある程度までは行ってるだろうさ。確認してみるか」

 ゆっくりと立ち上がるレイの体はふらついていた、すぐさまギズーがレイの体を支えて肩を貸した。次にガズルが確認をすると言ってレイ達の前へと歩いていく。氷の上に立つとしっかり固まっていることを確認して。

「そぉぉら! 行ってこい!」

 アデルを投げ飛ばした。
 何度か氷にバウンドした後ツルツルと滑っていくアデルは勢いを殺さずにどんどんと先に進んでいく。それを確認したガズルが皆の後ろにある丸太を担いで氷の上に置く。それに彼等は二人ずつ乗っかるとガズルが右足に重力球を作り出して思いっきり蹴り飛ばす。

「まず一発目!」

 最初に乗り込んだのはミラとファリックだ。蹴り飛ばされた丸太は氷の上を凄まじいスピードで滑っていく、乗っている二人は最初こそ恐怖を感じたが次第に楽しくなってきたのか丸太の上ではしゃぎ出す。

「――ったく、遊んでるんじゃねぇっての。次、ギズーとレイ」