「じゃぁ、始めるよ」
全員がグランレイクの泉の手前に集まるとレイはエーテルを練りだした。次第に足元から冷気が流れ出すとそれが一気に辺りを凍り付かせていく。目を閉じて集中すると泉が見る見るうちに凍り付いていく。氷雪剣聖結界で体内のエーテルをさらに飛躍的に増幅させると右手に集中させる。
「絶対零度」
グランレイクに右手を入れるとそこからまっすぐに氷が伸びていく。レイの体からはこの時期では味わえないほどの冷気を感じさせてくれる、それ程の法術であった。
後ろで見ていたミラはその技に思わず目を疑ってしまった、まさか自分よりこれ程の法術を使える人間が居るのかと目を丸くして驚いた。
ミラ以上にミトも驚いた、自分から出した案ではあったが本当に実現するとは思わなかったからだ。失敗すれば三キロ程度泳いで渡れば良いと考えて居た彼女は今目の前で起きている事象に開いた口が塞がらない。それを横目にギズーとガズルが見慣れた光景だと多少なり呆れている。
「相変わらずだな剣聖結界ってのは」
ガズルが口笛を吹いて呟いた、左手にはアデルの足が握られている。先ほどの一発で気絶しているアデルを。
「グランレイク全体を氷漬けなんてのは無茶だが、五メートル程の幅なら対岸までたどり着くだろうさ。これまでのレイの法術からすれば多分行けるさ」